2020年8月6日2021年12月24日税務

相続税の計算は4ステップ!申告要否を自分で確認できる方法教えます

相続税の申告画像

遺産相続などにより相続人になった場合は、相続税について考えなければなりません。相続について調べている方のなかには、相続税を申告する要件について知りたいと思っている方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、相続税の申告要否を自分で確認可能な方法や、相続税を計算する手順をご紹介します。相続税の計算手順を知ることで、相続税の節税に有効な方法についても理解を深められるでしょう。

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相続税の計算は想像以上に複雑

相続は人生で何度も発生するものではないため、相続人になった場合、相続税の計算に戸惑うことは多いでしょう。

すべてのプロセスを自分で行うことも可能ですが、節税対策も視野に入れるならプロへの相談がおすすめです。税理士に依頼すれば、相続税の計算方法や書類作成などを丁寧に分かりやすくサポートしてくれます。

概算計算で申告が必要と判断したら税理士に相談を

相続税の計算はとても複雑であり、素人が簡単にできるものではありません。相続が発生したら故人の財産総額を大まかに計算し、申告が必要だと判断した場合はプロの税理士へ相談することをおすすめします。

相続税の申告期限は、故人が亡くなった日から10か月後です。長い期間が用意されていると思いがちですが、この間に資料作成や財産評価、相続人同士の遺産分割協議などを実施する必要があります。

スケジュールが詰まってしまい、思うように手続きが進まない状況を避けるためにも、相続税のプロフェッショナルに任せましょう。

相続税の計算手順は主に4ステップ

相続税の計算は、故人の財産総額を正確に算出することから始まります。プラスの財産・マイナスの財産・みなし相続財産に関する知識が必要です。故人の財産総額が算出できれば、その財産総額から相続税の基礎控除額を差し引きます。

次に、法定相続人の相続分に応じて財産の分配額を決定します。その後、相続税の総額を算出し、相続人ごとの分配額が決定すれば、相続税の計算手順は完了です。

ステップ1:故人の財産総額を算出する

相続財産には現金や小切手だけでなく、不動産・有価証券といった資産や、借金などの負債もあります。相続にあたっては、それぞれを適切に評価するプロセスが必要です。

故人の財産総額を算出するために、まずは故人が残した財産にどのようなものがあるのかを確定しなければなりません。ここでは、プラスの財産・マイナスの財産・みなし相続財産など、相続財産の種類をご紹介します。

相続税の対象となる相続財産

相続財産のうち、遺産分割の対象となるプラスの財産の種類は以下のとおりです。

  1. 不動産関係
    土地(宅地・山林・農地・牧場・鉱泉地など)
    建物(戸建住宅やマンションなどの家屋・店舗・工場・駐車場など)
    権利(借地権・借家権・地上権など)
  2. 金融関係
    現金や小切手
    預貯金(普通預金・定期預金など)
    有価証券(国債・地方債・社債・株式・受益証券など)
    債権(貸付金・立替金など)
  3. 動産
    自動車・家具・貴金属・宝石・絵画骨董品などの家庭用財産
  4. 事業用財産
    機械器具・社用車・棚卸資産・商品など
  5. その他
    著作権・特許権・電話加入権など

みなし相続財産

みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではないものの、財産総額を計算する際に相続財産と「みなす」財産です。代表的なものには、生命保険金や死亡退職金があります。

みなし相続財産には非課税枠があるのが特徴です。たとえば生命保険金と死亡退職金は、それぞれ「500万円×法定相続人の数」で算出される金額が非課税限度額となります。

通常、相続放棄すると相続財産は受け取れません。しかし、みなし相続財産は本来の相続財産ではないため、相続放棄しても受け取れます。ただし、相続放棄により相続人としても認められなくなってしまうため、非課税枠の適用は受けられません。

相続するマイナス財産

相続財産のうち、財産総額から差し引く必要のあるマイナスの財産の種類は以下のとおりです。

  1. 借金
    借入金・買掛金・振出小切手・手形債務・住宅ローンの残債・クレジットカードの残債など
  2. 未払いの公租公課
    所得税・消費税・住民税・固定資産税・土地計画税・贈与税・国民健康保険料など
  3. 未払金
    家賃・水道光熱費・通信料・リース料・医療費など
  4. 保証債務
    連帯保証人の地位など

故人の葬式費用は相続開始時に存在する債務ではありませんが、財産総額から控除することができます。また、墓地・仏壇・仏具・神具は相続税の非課税財産になります。

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ステップ2:法定相続人による財産の分配額を決める

相続税はすべての相続人が申告するものではなく、一定額以上の遺産がある場合のみ申告が必要な税金です。

ここでは、申告の判断に必要な基礎控除額の計算方法をご紹介します。申告を必要としないケースや、特例制度・控除制度により税額が軽減されるケースも理解しておきましょう。

相続する財産総額が基礎控除額以下ならば申告不要

相続税は、遺産総額が基礎控除額以下であれば申告不要です。
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」により算出されます。

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、基礎控除額は以下のとおりです。

3,000万円+(600万円×3)=4,800万円

この場合は、相続する財産の総額が4,800万円以下なら相続税を申告する必要はありません。相続放棄をした人がいて相続人の人数が変わっても、基礎控除額は相続放棄前の人数で計算する点に注意が必要です。

配偶者の税額軽減制度

配偶者には、相続税の負担を軽減する制度が用意されています。
配偶者が相続した遺産額が「1億6,000万円まで」もしくは「配偶者の法定相続分まで」は、配偶者に相続税はかからないという制度です。

ただし、相続税がかからない場合であっても相続する財産総額が基礎控除額を超えている場合は、相続税の申告が必要です。配偶者の税額軽減制度は、あくまでも申告後に適用される制度であり、申告自体を免除するものではありません。

たとえば、家族構成が配偶者と子ども2人で、相続する財産総額が6,000万円のケースでは、実際にすべての遺産を配偶者が相続したとしても軽減制度により相続税はゼロです。しかし、基礎控除額を超えているため、相続税を申告する義務は発生します。

基礎控除以外に使える控除制度

相続税に関しては、以下に挙げるような控除制度を適用できる可能性があります。あてはまるものがないかチェックしておきましょう。

  • 相続開始前3年以内に故人から贈与を受けた財産がある場合、贈与価額に対応する贈与税の額を相続税から控除できます。ただし、相続開始前3年以内に故人から贈与を受けた財産については、相続財産に加算されます。
  • 相続人が未成年者または85歳未満の障がい者である場合は、相続税額から一定の金額を差し引けます。
  • 相続開始前10年以内に別の相続が発生していた場合、相次相続控除によって相続税から一定の金額を差し引くことが可能です。以前の相続からの期間が短いほど、控除額は大きくなります。

ステップ3:相続する財産総額から基礎控除額を引く

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。故人が遺言書を作成していなければ、法律に従って法定相続人が遺産を受け取れます。

故人の配偶者はどのようなケースでも法定相続人になりますが、正式な婚姻関係がなければ認められません。ここでは、法定相続人に関するルールをご紹介します。

法定相続人に該当する故人との関係と相続順位

配偶者以外の子ども・親・兄弟姉妹には、相続順位が定められています。子どもは第1順位であり、配偶者がいる場合は配偶者と子どもが法定相続人です。配偶者がいなければ、子どものみが法定相続人になります。

第2順位は故人の親です。故人に子どもがいない場合は配偶者と親が相続人になり、配偶者がいない場合は親のみが法定相続人になります。

故人に子どもも親もいない場合は、兄弟姉妹が第3順位の法定相続人です。配偶者がいる場合は配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となり、配偶者がいなければ兄弟姉妹のみ法定相続人になります。

法定相続人に分配される法定相続分

遺産分配の割合も法律により定められています。子ども・親・兄弟姉妹がおらず、法定相続人が配偶者しかいない場合、配偶者の法定相続分は遺産のすべてです。

法定相続人が配偶者と子どものケースでは、それぞれ2分の1ずつ相続します。配偶者と親の場合は配偶者の相続分が3分の2、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者の相続分が4分の3です。

配偶者がいない場合は相続順位に従って、子ども・親・兄弟姉妹のいずれかが遺産のすべてを相続します。子ども・親・兄弟姉妹が複数人いる場合は、相続分を均等に分割しなければなりません。

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ステップ4:相続税の総額を出し相続人で分配する

故人の財産総額を算出できたら、各相続人の分配額を割り出します。国税庁が公表している「相続税の速算表」を使用し、法定相続人ごとの税額を計算しましょう。

相続税の速算表では、法定相続分に応じた取得金額に対しての税率や控除額が分かります。計算する際には、以下に挙げる「相続税の2割加算」にあてはまるかどうかも注意が必要です。

各相続人の税額を算出する

故人の財産総額が6,000万円で法定相続人が配偶者と子ども2人のケースでは、配偶者の相続額が3,000万円、子ども2人の相続額も3,000万円です。子どもの相続額は均等に分配されるため、それぞれ3,000万円÷2=1,500万円ずつとなります。

速算表を用いた相続税の計算式は、「相続額×税率-控除額」です。このケースでは、配偶者の課税額は3,000万円×15%-50万円=400万円、それぞれの子どもの課税額は1,500万円×15%-50万円=175万円となります。

相続割合に従って相続税総額を分配する

各相続人の税額が算出できたら、すべてを足すと相続税の総額が出せます。この総額をもとに、それぞれの相続人が実際に取得した財産の割合に応じて、各人の相続税額を算出します。

前項の例では、相続税の合計は400万円+(175万円×2)=750万円となります。法定相続分で分けると、配偶者が750万円÷2=375万円、子どもは375万円÷2=187万5,000円です。

法定相続分で分配された額は、あくまでも目安です。故人の遺言がある場合は、そこに記された配分が何より優先されます。遺産分割協議によって、相続人同士の話し合いをもとに配分割合を自由に決めることも可能です。

「相続税の2割加算」に注意

通常の相続手続きで財産を取得した人が、被相続人の一親等の配偶者または血族以外である場合、相続税額が2割増になる場合があります。

たとえば、二親等である兄弟姉妹は、2割加算の対象者です。故人に兄弟姉妹がおらず、兄弟姉妹の子ども(甥・姪)が相続人になる場合も、2割加算の対象となります。

故人の子どもが亡くなっており、その子ども(故人の孫)が代襲相続する場合は、二親等ですが2割加算の対象にはなりません。しかし、親(故人の実子)が存命中である孫養子の場合、関係性は一親等ですが2割加算の対象者です。

相続税に有効な節税方法

多くの税金に特例や控除があるように、相続税にも節税につながるさまざまなルールが存在します。節税方法を知っておくことで、余計な税金を支払ってしまうような事態を避けられるでしょう。

ここでは相続税の節税に有効な、配偶者の税額軽減制度・生前贈与・生命保険金の非課税枠についてご紹介します。

配偶者の税額軽減制度を利用した節税方法

配偶者が実際に取得した財産額が「1億6,000万円以下」または「配偶者の法定相続分相当額以下」の場合は相続税がかかりません。

法定相続分である2分の1を超えた遺産を相続しても、総額で1億6,000万円を超えなければ非課税です。遺産分割する際は、配偶者ができる限り多くの財産を受け取るようにすれば、節税効果は高まるといえるでしょう。

ただし、次にその配偶者が被相続人となった場合、配偶者の税額軽減制度は利用できません。次の相続を見越した「二次相続対策」も考慮する必要があります。

生前贈与で節税する方法

生前贈与とは、将来相続人になるであろう人の相続税負担を軽減するために、生前から無償で財産を渡しておく行為です。贈与には贈与税が発生する場合があるため、節税効果を生み出すためには贈与税の対象とならない範囲で贈与を行う必要があります。

もっとも簡単な方法は、毎年110万円を超えない範囲で贈与を繰り返す方法です。贈与税には年間110万円の基礎控除があることを利用し、非課税で生前贈与できます。ただし、一定の場合には定期贈与とみなされ、贈与税が課税されるリスクがあるため、注意が必要です。

60歳以上の親または祖父母が、20歳以上の子や孫に贈与する場合、累計で2,500万円を超えるまで贈与税が発生しない制度も活用しましょう。この制度を利用した場合は、贈与した財産が相続時に相続財産として加算され、相続税が課税されます。
また、一度この制度を活用すると途中で撤回できないなどのデメリットがあるため、活用する際には注意が必要です。

生命保険金の非課税枠を利用して節税する方法

生命保険金は、みなし相続財産として課税されます。みなし相続財産には非課税枠があり、受け取った死亡保険金が非課税枠の範囲を超えなければ課税されません。この仕組みを利用すれば、相続税の節税が可能です。

死亡保険金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」で算出されます。たとえば、配偶者と子ども3人が相続人となった場合、500万円×4=2,000万円が死亡保険金の非課税限度額です。

ただし、相続放棄した人が死亡保険金を受け取った場合、非課税枠の適用はできません。受け取った死亡保険金はすべて課税対象となります。

まとめ

相続税の計算はとても複雑であり、今回の記事で解説した基本事項以外にも、さまざまな要素が関係します。また、適切な節税方法を知らなければ、不必要に多くの税金を課されることにもなりかねません。

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芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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