2023年2月22日2023年2月21日税金対策

アメリカの確定申告は日本より複雑!期限や申告義務者の条件を解説

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アメリカで給料や報酬を得ている方の中には、「アメリカで確定申告は必要か」「日本とアメリカどちらに納税すればよいか」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、アメリカで確定申告が必要な方の条件や申告方法について解説します。アメリカの所得税率や申告期限といった基本情報も併せて紹介するため、確定申告を控えている駐在員の方に必見の内容です。ぜひ参考にしてみてください。

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アメリカにおける確定申告の概要

海外では所得税が課されない国もありますが、アメリカは日本と同じく所得税の制度を設けています。ただし、日本の制度と全く同じではありません。制度内容や申告方法に異なる点があるため注意が必要です。ここでは、アメリカにおける確定申告制度の特徴を紹介します。

年末調整がない

年末調整とは、1年の終わりにその年の所得税の過不足を計算し調整する手続きです。会社員の場合、所得税は毎月の給与から天引きされますが、正しい税額ではありません。実際に納める所得税の金額が確定した段階で、還付もしくは追加徴収します。

日本では雇用主が年末調整をしますが、アメリカには年末調整の制度がありません。アメリカの所得税課税対象者に該当する方は、会社員でも自身で確定申告をする必要があります。

確定申告はTax Returnと呼ばれる

Tax Return(タックスリターン)とは、所得税の申告・納税に関する手続きです。「リターン」という言葉から税金が戻ってくるようなイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。アメリカは年末調整の制度がないため、経済活動を営む全国民にTax Returnの義務が課せられます。

アメリカでは、州によって税体系や税率が異なる点に注意しましょう。自身の滞在している州の税制度を確認することが大切です。

3つの申告パターンがある

アメリカでは恒久的な収入は全て総合課税に分類されます。日本では、配当所得や譲渡所得といった一部の所得では「分離課税」か「総合課税」を選択できますが、アメリカにはこのような制度はありません。

アメリカの所得税は、「独身用」「夫婦合算用」「夫婦別々用」の3つに大別され、主な違いは税率です。夫婦用の場合、独身用と比較して税金の負担が軽減されます。

アメリカの確定申告が必要な人と所得の種類

アメリカに駐在している方の中には、どの国で確定申告をすればよいのか分からず不安を感じている方もいるでしょう。ここでは、アメリカで確定申告が必要な申告義務者と、申告の対象となる所得の種類や条件を紹介します。自身が申告義務者に該当するか確認しましょう。

確定申告義務者の条件

アメリカで経済活動を営んでおり、基準値以上の年間総所得がある方は確定申告が必要です。金額は申告の種類や年度により異なります。例えば、2022年度の場合、独身用は1万2,950ドル以上、夫婦合算申告では2万5,900ドル以上が基準値です。

アメリカ市民権または永住権所持者は現在の居住地にかかわらず、全ての所得に対して申告の義務が課されます。一方、アメリカの税法上非居住者に該当するケースでは、アメリカの国内源泉所得しか申告の対象となりません。

なお、居住者と非居住者の条件は以下のように定められています。国によって、申告義務者の判定基準が異なるため事前によく確認しましょう。

【居住者】
・アメリカ市民権所有者
・永住権所有者
・米国滞在住期間が31日以上あり、過去3年間のアメリカ滞在期間が183日以上ある者

【非居住者】
・居住者の条件を満たさない者

確定申告が必要な所得

確定申告が必要な課税対象となる所得の種類と一例は以下の通りです。自身の所得が該当するかチェックしましょう。

所得の種類 具体例
給与所得 給与、賞与、チップ
利子所得 預金利子、公社債利子
配当所得 配当金
事業所得 個人事業主の所得
農業所得 農産物や家畜の売却益
雑所得 賞金、宝くじの収入、債務免除益
不動産所得等 家賃収入、ロイヤリティー収入
退職年金 個人年金、企業年金
社会保障給付金 公的年金
譲渡所得 キャピタルゲイン
還付金 税金などの還付金
離婚慰謝料 離婚の際に受け取った慰謝料
その他の損益 譲渡損益
失業保険給付 失業保険金

非課税対象となる所得

全ての所得が課税対象ではなく、中には非課税となる所得もあります。非課税所得の一例は以下の通りです。

・生命保険金
・損害賠償金
・奨学金
・相続財産(相続税の課税対象)
・贈与財産(贈与税の課税対象)

また、教育費や保育料、通勤費のような一定額まで非課税の所得もあります。課税・非課税は所得ごとに細かく規定されているため、どの所得が課税対象か事前に確認することが大切です。

アメリカの所得税率

アメリカの所得税は、日本と同じ累進課税制度が採用されています。累進課税制度とは、課税所得が増えるほど税率が上がる制度です。

また、課される税金は連邦税と州税、市税(郡税)の3種類に分けられます。連邦税は、アメリカ全土で一律です。一方、州税や市税は地域によって異なり、無税となるケースもあります。自身の滞在している地域の州税と市税を確認しましょう。

【アメリカ連邦所得税率】税率

  独身用 夫婦合算用 夫婦別々用
10% 1万275ドル以下 2万550ドル以下 1万275ドル以下
12% 1万275ドル超 2万550ドル超 1万275ドル超
22% 4万1,775ドル超 8万3,550ドル超 4万1,775ドル超
24% 8万9,075ドル超 17万8,150ドル超 8万9,075ドル超
32% 17万50ドル超 34万100ドル超 17万50ドル超
35% 21万5,950ドル超 43万1,900ドル超 21万5,950ドル超
37% 53万9,900ドル超 64万7,850ドル超 32万3,925ドル超

アメリカで確定申告する際の注意点

アメリカには年末調整がないため、自身で確定申告をする必要があります。しかし、アメリカの所得税制度は日本以上に複雑です。申告手続きに不備がないよう気を付けましょう。ここでは、アメリカで確定申告をする際に注意したいポイントを3つ紹介します。

外国金融口座報告書を提出する必要がある

FBARと呼ばれる外国金融口座報告書も確定申告と同時期に提出しなければなりません。報告義務者の条件は以下のように定められています。

・アメリカ市民権や永住権を保持している者、または就労ビザを利用しアメリカに183日以上滞在している者
・アメリカ国外に合計1万ドル以上の金融資産を保有している者

アメリカ国外に資産を保有する方の脱税行為を防止するための制度です。2つの条件に合致する方は預貯金の残高をアメリカ財務省に報告する義務があります。

「税理士がいない」というのは間違い

「アメリカには税理士がいないから公認会計士が税務を代行する」と聞いたことがある方もいるかもしれませんが、実際はアメリカにも税理士は存在します。米国税理士も日本と同様、国家資格です。アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)が実施する試験に合格し、当局から登録番号を取得すると、税務に関する業務ができます。

ただし、公認会計士や弁護士も税務に携われるため、税理士の数は日本ほど多くありません。専門家への依頼を検討中の方は、公認会計士や弁護士、国際業務が可能な日本の税理士も視野に入れて探しましょう。

SSNを取得しなければならない

アメリカでは、SSN(ソーシャルセキュリティナンバー)の情報を基に納税情報を管理しています。SSNは、日本におけるマイナンバーのようなものです。確定申告の際はSSNの提出が必要ですが、アメリカ市民でない方はSSNが取得できないケースもあります。

SSNの取得が難しいときは、納税申告専用の番号であるITIN(個人用納税者番号)を取得しましょう。ただし、ITINを利用する際は電子申告ができません。確定申告書類にパスポート原本や公証の添付が求められるため、郵送による確定申告のみが有効な手段です。

アメリカで発生した所得の確定申告方法と期限

これまで会社で年末調整を受けていた方の中には、確定申告に難しさを感じている方もいるかもしれません。アメリカで確定申告を滞りなく進めるには、申告方法や期限、計算方法に関する知識を深めることが大切です。日本よりも税制度が複雑であるため、事前にしっかりと確認しましょう。

申告期限

所得税の対象となるのは、1月1日から12月31日までの1年間の所得です。アメリカの居住者の場合、申告期限は原則として申告対象となる年の翌年4月15日(土日祝の場合は翌営業日)です。一方、非居住者は翌年6月15日と自動的に2か月間延長されます。

ただし、州税や市税は地域によって期限が異なるため注意しましょう。例えば、ハワイ州では居住者・非居住者といった条件にかかわらず、申告期限は翌年4月20日です。

申告方法

申告書の作成方法は主に3種類で、以下のいずれかを選択します。

・確定申告の書類を手に入れて自分で申告する
・ソフトウェアやオンラインサービスを使用する
・専門家に依頼する

居住者と非居住者、独身と夫婦といった条件によって申告フォームや所得税率が異なるため、申告は容易ではありません。正しく所得税を確定申告したい方や所得の種類が多く自身で対応しきれない方は、専門家に依頼するのが望ましいでしょう。

計算方法

所得税の計算方法は日本と似ていて、比較的簡単に税額を求められます。計算の手順と計算式は以下の通りです。

1.総所得額-所得控除=課税所得
2.課税所得×税率=所得税額
3.所得税額-税額控除=納税額

一例として、所得控除には医療費控除や寄付金控除、税額控除には外国税額控除や子女税額控除があります。

なお、外国税額控除は、海外で課される税金とアメリカで課される税金の二重課税を防ぐための制度です。アメリカ以外の国で納付した所得税のうち一定額を所得税額から控除できるため、外国で課税対象の所得がある方は利用しましょう。

確定申告の期限を過ぎた場合はどうなる?

確定申告の期限を過ぎても申告・納税を完了できなかった場合、ペナルティが課される恐れがあります。手続きが複雑でも申告期限内に進めることが大切です。ここでは、ペナルティの内容や申告期限に間に合わないときの対処法を紹介します。

ペナルティが課せられる

申告期限に遅れることに対する懲罰は設けられていません。ただし、納税義務がある方が申告期限に間に合わなかった場合、不足する納税額に対して1か月当たり5%の延滞税が課されます。

アメリカではSSNやITINによって納税情報が管理され、納税の有無や納税額が調査されるため、申告・納税遅れが発生しないように努めましょう。なお、還付対象となる方が申告していないケースは追徴課税の対象外です。

一定期間申告期限を延長できる

確定申告の申告期限は、状況に応じて一定期間延長できます。ケースごとの延長可能期間は以下の通りです。

・アメリカの居住者:6か月
・アメリカ以外に住んでいる市民権保持者や永住権保持者:2か月(自動延長)+4か月=合計6か月
・市民権や永住権を持っていない非居住者:2か月(自動延長)+6か月=合計8か月

ただし、延長できるのはあくまで申告期限で、納税期限ではありません。延長の届け出を出しても、追納義務が発生するときは差額に対して延滞税が課されます。

申告漏れの時効は3年間

連邦所得税の申告漏れの時効は、提出日か申告期限の遅いほうを基準日として3年間です。ただし、所得の25%以上の過少申告では6年間に延長されます。また、無申告の場合や虚偽・詐欺の行為があったと判断されると時効が成立しないため注意しましょう。

なお、時効は税金を多く納め過ぎた際の還付申告にも適用されます。還付金がある場合も先延ばしにせず、期限内に申告しましょう。

日本帰国後もアメリカでの確定申告が必要?

アメリカから日本に帰国した際も、アメリカで確定申告が必要なケースがあります。アメリカにおける課税者のステータスは「居住者」「非居住者」「二重ステータス」の3種類です。ステータスによって申告義務の発生条件が変わります。

条件は細かく定められており複雑です。納税義務者になる可能性がある方は、自身がどのステータスに該当するかしっかりと確認しましょう。

米国居住者(Resident)にあたる場合

アメリカ国籍や永住権を保持している方、通年でアメリカに居住している方は、所在地にかかわらず税務上アメリカの居住者と見なされます。居住者に該当するのであれば、日本帰国後もアメリカで確定申告が必要です。

アメリカ国内だけでなく全世界で得た所得が対象ですが、帰国後5年以内に限り、アメリカ国内源泉所得は日本で所得税申告をする必要はありません。

米国非居住者(Non Resident)にあたる場合

アメリカ国籍や永住権を保持していない方、居住日数が基準を満たさない方は非居住者に該当します。非居住者は、アメリカ国内源泉所得が課税対象です。

なお、アメリカが発行するビザのうち、A・F・G・J・M・Qのビザを保持している方も非居住者と見なされます。ビザの種類は以下の通りです。

・A:外交・公用ビザ
・F:学生ビザ
・G:国際機関ビザ
・J:交流訪問者ビザ
・M:学生ビザ
・Q:国際文化交流ビザ

部分居住者(Dual Status Statement)にあたる場合

アメリカ滞在初年度で居住者となる方や、日本に帰国したことで非居住者となる方など、同一年内で居住者と非居住者両方に該当する方は部分居住者と見なされます。部分居住者の場合、非居住者に該当する期間の課税対象はアメリカ国内源泉所得のみ、居住者に該当する期間は全世界所得が課税対象です。

部分居住者として申告する際は、居住者に適用される控除や制度のうち一部を利用できない点に注意しましょう。例えば、標準控除や夫婦合算申告、電子申告といった制度は利用できません。

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まとめ

アメリカでは年末調整がないため、所得税課税対象者は自身で確定申告をしなければなりません。ステータスによって申告対象の所得が異なるだけでなく、独身者と既婚者で税額が違ったり州によって州税の申告期限に差があったりと、日本と比較して制度内容が複雑です。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。 培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に資産運用・税金対策をご提案している。 現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
英国国立オックスフォード大学ELP修了予定。東京大学EMP修了。
また、Mastercard®最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDのオフィシャルアンバサダーに就任。

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