2021年12月1日2021年12月16日

【贈与税の配偶者控除】メリットやデメリット申告手続きまでまるごと解説

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夫婦間で財産の贈与を検討している方の中には、効果的な贈与税対策について知りたい方もいるのではないでしょうか。

贈与税の配偶者控除を利用すれば贈与税対策ができますが、生前贈与と相続のどちらが得かは総合的な判断が必要です。贈与税の配偶者控除を利用するメリットやデメリットを知り、生前贈与と相続の税金対策を比較することで、適切な税金対策ができるでしょう。

そこでこの記事では、贈与税の配偶者控除を利用するメリットやデメリット、要件、計算方法、手続き方法などを紹介します。

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贈与税の配偶者控除を利用する3つのメリット

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婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産の取得資金を贈与した場合、贈与税の配偶者控除の特例が受けられます。ここでは、贈与税の配偶者控除を利用する3つのメリットについて見てみましょう。

暦年贈与の基礎控除と併用できる

贈与税の配偶者控除は暦年贈与の基礎控除と併用できます。「暦年贈与」とは、贈与税の課税方式のひとつである「暦年課税」を選択して贈与することです。暦年贈与の基礎控除額は年間110万円で、この金額までであれば贈与を受けても贈与税がかかりません。

さらに、贈与税の配偶者控除による控除額は最高2,000万円です。暦年贈与の基礎控除と併用できるため、生前贈与を受けた側は最高2,110万円の控除が受けられます。

相続税対策になる

贈与税の配偶者控除を利用した贈与は、相続税対策としても有効です。贈与税の配偶者控除の特例を受けた財産は、相続開始前3年以内の生前贈与加算の対象になりません。生前贈与加算とは、相続開始前3年以内に被相続人が相続人に贈与した場合、相続税の課税価格に贈与額を加算する規定です。

例えば、贈与税の配偶者控除を受けた贈与から1年後に被相続人が死亡しても、その贈与は相続財産に含みません。贈与税の配偶者控除を利用することで、相続税の課税対象となる財産を相続財産から減らせます。

住宅売却時には所得税対策になることも

贈与税の配偶者控除を利用して居住用不動産を夫婦の共有財産にすれば、住宅の売却時に所得税対策になることもメリットです。居住用不動産を譲渡(売却)して譲渡益が発生した場合、譲渡益に対して3,000万円の特別控除が利用できます。夫婦で共有すると、夫妻それぞれで利用できるため、譲渡益が6,000万円までは税金がかかりません。

ただし、売却予定がある居住用不動産には、贈与税の配偶者控除を利用できないことに注意しましょう。あくまで将来的な売却時に限った所得税対策として効果を発揮します。

贈与税の配偶者控除を利用する3つのデメリット

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贈与税の配偶者控除は、税金対策として大きなメリットがあります。ただし、相続税にも配偶者控除があり、贈与税より相続税の控除額のほうが高額です。他にも、いくつかのデメリットがあることに注意しましょう。ここでは、贈与税の配偶者控除を利用する3つのデメリットについて解説します。

相続税対策としての効果は薄い

贈与税の配偶者控除は、相続税対策としての効果は限定的です。相続税にも配偶者控除の制度があり、配偶者が相続する正味の遺産額(実際に取得した遺産額)に対して、少なくとも1億6,000万円の控除が受けられます。相続税の配偶者控除の要件は以下の通りです。

対象となる相続人 被相続人の配偶者
対象となる財産 相続税の申告期限までに分割されている正味の遺産額
相続税における配偶者控除が受けられる正味の遺産額 「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか高いほう

夫婦間の相続は控除額が大きく、贈与税の配偶者控除よりも相続税における配偶者控除を利用したほうが効果的なケースもあります。どちらを利用するかは、生前贈与のメリットを含めた総合的な判断が必要です。

不動産取得税や登録免許税が課される

居住用不動産を生前贈与すると、不動産取得税や登録免許税の負担が大きいことがデメリットです。

不動産取得税は、土地や家屋を贈与または売買によって取得した場合に課税される都道府県税で、相続により取得した場合には課税されません。一方、生前贈与の場合、土地・家屋共に課税標準額(固定資産税評価額)の3%(2024年3月31日までに取得したものは、固定資産税評価額を2分の1に減額)が課されます。

登録免許税は、不動産の所有権や抵当権を設定する際に納付する国税です。生前贈与の場合は課税標準額の2%ですが、相続の場合は0.4%で済みます。それぞれの税率をまとめると以下の通りです。生前贈与のほうが比較的コストが高いことが分かります。

  不動産取得税 登録免許税
生前贈与 3% 2%
相続 課税されない 0.4%

小規模宅地等の特例は利用できない

居住用不動産を生前贈与する場合、小規模住宅地等の特例を利用できないこともデメリットです。小規模住宅地等の特例を利用すると、宅地の評価額を最大で80%減額し、相続税の軽減が受けられます。

特例の対象は、相続開始直前に被相続人または被相続人と生計を共にしていた被相続人の親族が事業用・居住用に使っていた土地です。居住用不動産であれば、330㎡の部分まで評価額を80%減額します。ただし、相続の場合のみ利用できる特例で、生前贈与では利用できません。

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配偶者への贈与は居住用財産と取得資金のどちらのほうがお得?

贈与税の配偶者控除で控除対象となる財産は、居住用不動産または居住用不動産の取得資金のいずれかです。土地や家屋そのものを贈与する場合と取得するための金銭を贈与する場合を比べると、前者のほうが贈与税の節税効果が期待できます。

その理由は、贈与するのが土地であれば公示価格の8割に当たる路線価、家屋であれば建築代金の5割~7割に当たる固定資産税評価額に基づいて贈与税を計算するためです。実際の資産価値よりも低く評価される点を利用すれば、節税効果を高められるでしょう。

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贈与税の配偶者控除の特例は利用するべき?

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贈与税の配偶者控除にはメリットとデメリットがあり、利用したほうがよいかは総合的に判断することが大切です。ここでは、利用に向いているケースと向いていないケースの例を紹介します。

利用に向いているケース

贈与税の配偶者控除を利用するのに向いているケースは以下の通りです。あくまで一例ですが、自分に向いているかどうかを判断する材料として参考にしてみてください。

・基礎控除や配偶者控除、小規模住宅地等の特例を利用しても相続税がかかる場合
・不動産取得税や登録免許税が課されるというデメリットを、贈与税の税金面のメリットが上回る場合
・二次相続時に子の税負担が大きい場合

利用には向いていないケース

生前贈与より相続のほうが有利なのは、基礎控除や配偶者控除、小規模住宅地等の特例が利用できるためです。正味の遺産額は1億6,000万円もしくは法定相続分まで控除でき、宅地の評価額は330㎡の部分まで80%も減額されます。例えば、配偶者の法定相続分が5億円であれば控除額も5億円です。

配偶者控除や特例を利用することで相続税がかからない場合、贈与税の配偶者控除を利用する税金面のメリットはありません。

贈与税の配偶者控除を利用する要件

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贈与税の配偶者控除は、要件を全て満たさなければ利用できません。また、贈与税の配偶者控除における居住用不動産の要件も把握したいポイントです。ここでは、贈与税の配偶者控除を利用する要件や居住用不動産の要件について解説します。

利用するための要件

贈与税の配偶者控除を利用できるのは、一定の要件を満たした場合のみです。具体的には、以下の全ての要件を満たす必要があります。

・夫婦の婚姻期間が20年以上であること
・贈与するのは居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること
・贈与された翌年の3月15日までに、その居住用不動産または贈与された金銭で購入した居住用不動産に住み始め、引き続き住む見込みがあること
・過去に同じ配偶者から当該特例を利用した贈与を受けていないこと
・所定の書類を添付して贈与税の申告をすること

居住用不動産を取得するための金銭を受贈するなら、実際に取得資金として使い、居住用不動産を購入しなければなりません。また、特例が利用できるのは同じ配偶者からの贈与に対して一度だけという点にも注意しましょう。

利用できる不動産の要件

居住用不動産もしくは居住用不動産を取得するための資金が贈与税の配偶者控除の対象となります。居住用不動産とは、配偶者が居住するための国内にある家屋やその敷地です。居住用家屋と敷地は一括で贈与しなくても構いません。ただし、敷地のみを贈与する場合、居住用家屋を夫か妻または受贈者と同居する親族が所有している必要があります。

贈与するのが店舗併用住宅や店舗兼住宅の場合、原則、居住用の部分のみが対象です。家屋または敷地の面積のうち、居住部分の面積がおおむね9割以上なら、店舗部分も含めて全部を居住用不動産と見なします。

贈与税の配偶者控除を利用する際の計算方法

居住用不動産または居住用不動産の取得資金の贈与を受けて、贈与税の配偶者控除を利用する場合、贈与税額を求める計算方法は以下の通りです。

1.基礎控除後の課税価格=贈与された居住用不動産の評価額-配偶者控除(最大2,000万円)-暦年贈与の基礎控除額110万円
2.贈与税額=基礎控除後の課税価格×贈与税の税率-控除額

贈与税の課税方式のひとつである暦年課税の税率は、「一般税率」と「特例税率」の2種類です。どちらを適用するかは、贈与者と受贈者の関係や年齢で決まります。特例税率は直系尊属から20歳以上の直系卑属に贈与した場合に用い、一般税率を用いるのはそれ以外の場合です。配偶者への贈与では一般税率を用います。一般税率の速算表は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% なし
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円


例として、贈与された居住用不動産の評価額が4,000万円の場合で計算してみましょう。まずは、基礎控除後の課税価格を求めます。

1.基礎控除後の課税価格
=贈与された居住用不動産の評価額-配偶者控除(最大2,000万円)-暦年贈与の基礎控除額110万円
=4,000万円-2,000万円-110万円
=1,890万円

基礎控除後の課税価格が1,890円なので、税率は50%、控除額は250万円です。したがって、贈与税額は以下の式で求められます。

2.贈与税額
=基礎控除後の課税価格×贈与税の税率-控除額
=1,890万円×50%-250万円
=695万円

(参考: 『贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁』/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm

贈与税の配偶者控除を利用するための準備と手続き方法

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贈与税の配偶者控除は申告制のため、各種書類の準備が必要です。まずはチェックシートで特例を利用できるか確認し、必要書類を準備してから申告しましょう。ここでは、贈与税の配偶者控除を利用するための準備と手続き方法について解説します。

1.チェックシートで特例を利用できるか確認する

贈与税の配偶者控除を利用するには、国税庁が指定する要件を全て満たす必要があります。自身のケースで利用できるか判断に迷う方には、国税庁が公開している「贈与税の配偶者控除の特例のチェックシート」がおすすめです。

チェックシートには9つのチェック項目があります。例えば、「婚姻の届出をした日から贈与を受けた日までの期間は20年以上ですか」「これまでに、この特例の適用を受けたことがありますか」といった内容です。9つ全ての項目を満たしていれば、原則として贈与税の配偶者控除が利用できます。

要件を平易な言葉に置き換えているため、簡単にチェックできるのが利点です。まずは、チェックシートで特例の利用の可否を確認しましょう。

(参考: 『令和元年分 贈与税の配偶者控除の特例のチェックシート|国税庁』/https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/check/r01/pdf/02.pdf

2.必要書類を準備する

贈与税の配偶者控除が利用できることを確かめたら、申請手続きに必要な書類や添付書類を準備します。準備する書類と概要は以下の通りです。

必要書類・添付書類 概要
贈与税申告書 「第一表」を使用する
マイナンバー 贈与税申告書に記載する
戸籍謄本または抄本 財産の贈与を受けた日から10日以後に作成されたもの
戸籍の附票の写し 財産の贈与を受けた日から10日以後に作成されたもの
居住用不動産の登記事項証明書 受贈者が居住用不動産を取得したと証明するもの
居住用不動産を評価するための書類(固定資産税評価証明書など) 金銭ではなく居住用不動産を受贈した場合に必要

 

3.申告手続きをする

贈与税の申告手続きでは、贈与税申告書の「第一表」を税務署や国税庁の公式サイトから取得し、必要事項を記入します。贈与税申告書は他にもありますが、暦年贈与のみの申告であれば第一表のみで構いません。第一表には贈与者・受贈者の個人情報や贈与税額の計算結果、各種控除について記入します。

贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。受贈者の住所を管轄する税務署に直接または郵送で提出するか、e-Taxで送信しましょう。

なお、贈与税の配偶者控除は期限後の申告でも利用できます。申告済みの内容より控除額が増える場合、更正の請求も可能です。

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まとめ

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居住用不動産を配偶者に贈与する場合、一定の要件を満たせば贈与税の配偶者控除が利用できます。贈与税対策として有効ですが、生前贈与と相続のどちらがお得かは、総合的に判断しなければなりません。正しい判断をするには専門的な知識や豊富な経験を要するため、税金対策や資産運用の専門家と連携しましょう。

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芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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