2021年11月24日2021年12月2日

生前贈与のメリットとデメリットとは?遺産相続との違いも解説!

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生前贈与は、相続税対策として有効な方法のひとつです。次世代に渡せる財産を多く残すために、生前贈与を活用しようと考えている方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、相続税対策として生前贈与するメリットとデメリットをご紹介します。スムーズに生前贈与するためのポイントも併せて見ていきましょう。税制の特徴をきちんと理解すれば、効果的に生前贈与できるでしょう。

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生前贈与をする5つのメリット

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生前贈与には多くのメリットがあります。相続税や相続トラブルの対策になるのが主なメリットですが、法定相続人以外に財産を渡したいケースにも対応できるのが特徴です。これらのメリットをどのように活用すればよいのか考慮し、自分の意志通りに財産を渡せるように準備しましょう。

暦年課税の基礎控除がある

生前贈与するケースで注意しなければならないのは贈与税です。しかし、課税方式として暦年課税を選択した場合、年間110万円の基礎控除があります。暦年贈与すると、受贈者1人あたり年間110万円までの贈与財産には贈与税が課せられません。

贈与税がかからない範囲で生前贈与し、遺産の総額を減らせれば相続税対策として有効です。一例として、子2人に年間110万円ずつ贈与し、5年間続けると合計で1,100万円の財産を渡せます。このケースは暦年課税における基礎控除の範囲内なので、受贈者が贈与税を納める必要はありません。

相続時精算課税制度が利用できる

相続時精算課税制度は、以下の条件をいずれも満たすと贈与財産の累計が2,500万円以下なら贈与税が課されない制度です。

・60歳以上の父母または祖父母が贈与者
・20歳以上の子または孫が受贈者

相続時精算課税制度を利用すると、存命中に多くの財産をまとめて渡せます。特に、評価額が上がる可能性が高い不動産などを保有しているケースで有効です。相続発生時に評価額が変動していても贈与時の価額で相続税額を算出するため、評価額が上がっていれば税負担を軽減できます。

ただし、相続時精算課税制度を利用して受贈した財産は、贈与税が課せられなかった場合でも相続税の課税対象です。途中で暦年課税方式に変更できない点にも注意しましょう。

法定相続人ではない人にも財産を渡せる

生前贈与を活用すると、法定相続人以外にも財産を渡せます。民法第887条、889条、890条によって定められている法定相続人の範囲は以下の通りです。

常に相続人 配偶者  
第1順位 すでに死亡している場合はその子の直系卑属が代襲相続人になる
第2順位 直系尊属 子および代襲相続人がいない場合に相続人になる
第3順位 兄弟姉妹 第2順位の相続人がいない場合に相続人になる

孫に財産を相続させたいと思っていても、子が存命なら孫は法定相続人にはなりません。しかし、生前贈与を活用すれば孫にも財産を渡せます。第三者に財産を渡すことも可能なので、お世話になった人に贈与したいケースでも生前贈与を検討しましょう。

相続トラブル対策になる

生前贈与では誰にどの財産を渡すのか選択できるので、相続トラブル対策に有効です。遺言で誰にどの財産を渡すのかを指定することも可能ですが、各相続人にとって不平等な内容が記載されているケースでは相続トラブルに発展しやすいです。内容が曖昧だと解釈の違いが発生し、トラブルになることもあるので注意してください。

生前贈与では遺産の分配方法や内容を明確にでき、事前に譲渡できるのでトラブルが発生しにくいです。本人が存命中なので、何らかの問題が発生した際に直接対応できるのも大きなメリットです。

控除や住宅・教育資金などの特例がある

生前贈与するときには、いくつかの控除や非課税制度を活用して贈与税の負担を軽減できます。主な控除や非課税制度は以下の通りです。

控除・非課税制度の名称 控除・非課税対象額 概要
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除 最大2,000万円
(基礎控除を含むと、最大2,100万円まで)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与する場合の特例
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税 最大1,000万円 2023年3月31日までに、20歳以上50歳未満の受贈者が直系尊属から結婚・子育て資金の贈与を受けた場合の制度
(結婚資金として認められるのは300万円まで)
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税 最大1,500万円 2023年3月31日までに30歳未満の受贈者が直系尊属から教育資金の贈与を受けた場合の非課税制度
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 最大3,000万円
(住宅用家屋の種類ごとに上限額が異なる)
2021年12月31日までに直系尊属からの贈与によって、自己居住用の住宅用家屋を新築・取得・増改築した場合の非課税制度


特定の目的で贈与するケースにおいて、大きなメリットがあることが分かります。うまく活用すれば、贈与税負担を大幅に軽減できるでしょう。

生前贈与をする5つのデメリット

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生前贈与には多くのメリットがありますが、同時に覚えておきたいデメリットもあります。贈与する財産によっては贈与税以外の税金が課されたり、贈与時期によっては無効になったりするケースがあるので注意が必要です。

ここでは生前贈与するときに意識したいデメリットを5つ解説します。メリット・デメリットの双方をきちんと理解したうえでうまく生前贈与しましょう。

控除や非課税額以上の生前贈与は贈与税がかかる

贈与税には基礎控除をはじめとしたさまざまな控除や非課税制度があります。しかし、控除額や非課税対象額を超えて贈与すると、超えた分に対して贈与税が課されるので注意しましょう。贈与税の速算表は以下の通りです。

一般税率
課税価格
※基礎控除後
税率 控除額
200万円以下 10% なし
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

 

特例税率
課税価格
※基礎控除後
税率 控除額
200万円以下 10% なし
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

特例税率は、当該年の1月1日時点で20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けたときに適用します。一般税率は、特例税率に該当しない場合に適用する税率です。一例として600万円(基礎控除後の課税価格は490万円)の贈与を受けたケースを想定して計算しましょう。

・一般税率: 490万円×0.3-65万円=82万円
・特例税率: 490万円×0.2-30万円=68万円

税率によって贈与税額が大きく異なるので、自分がどちらの税率に該当するか確認することが大切です。

(参考: 『贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁』/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)

土地や不動産の贈与は登録免許税や不動産取得税がかかる

土地などの不動産を生前贈与すると、受贈者は所有権移転登記しなければなりません。不動産を取得するときには不動産取得税、所有権移転登記するときには登録免許税が課されます。それぞれの税率は以下の通りです。

  登録免許税
(所有権移転登記)
不動産取得税 備考
贈与の税率 土地: 2%
建物: 2%
土地: 3%
住宅用家屋: 3%
非住宅用家屋: 4%
2024年3月31日までに宅地を取得した場合、その土地の課税標準額が1/2になる
相続の税率 土地: 0.4%
建物: 0.4%
非課税  
計算式 固定資産税評価額×税率 不動産の価額(課税標準額)×税率  

贈与は相続に比べて税負担が重くなるので、これらの税金についても意識しましょう。相続税と贈与税の差だけではなく、登録免許税や不動産取得税も考慮してどちらが有利か考えることが大切です。

(参考: 『マイホームを持ったとき 1|国税庁』/https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_1.htm)

「生前贈与」と税務署に認められない場合がある

生前贈与は相続税対策に有効ですが、方法によっては税務署に認められないケースがあります。税務署から生前贈与を否認されることを防ぐためにも、以下の2点を満たすことが大切です。

・受贈者が財産を受け取ったことを認識する
・書類上の証明がある

書類上の証明は税務署に認めさせるのに重要なので、贈与契約書を作成してきちんと保管しましょう。他にも、税務署が定期贈与や名義預金と判断すると生前贈与が否認されます。

相続開始前3年以内の贈与は無効扱いになる

贈与者と受贈者の関係が被相続人と相続人、あるいは遺贈者と受遺者になる場合、相続開始前3年以内の贈与は生前贈与扱いになりません。これらの財産は相続財産として取り扱うため、相続税の対象です。

被相続人の死亡日から起算して3年前の日から死亡日までの贈与が無効になるので、贈与契約書を確認してどれが無効になるのか確認しましょう。

子が存命している場合の孫は法定相続人にならないため、このルールの適用対象外です。ただし、遺言によって孫に遺贈するケースでは対象になるので注意しましょう。贈与税の非課税制度を利用して贈与した財産は対象外です。

自身の老後資金に影響が出る可能性がある

多くの財産を生前贈与すると、自身の老後資金に影響する可能性があります。生前贈与する際には、あらかじめ必要な生活資金・老後資金を計算しましょう。

相続税対策だけを考えるのではなく、自身が必要とする資金をきちんと手元に残して老後の生活を安定させることも大切です。病気や災害、介護などの不測の事態に備えて多めに残すことをおすすめします。

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生前贈与と遺産相続の違いとは?

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生前贈与と遺産相続の違いが気になる方もいるのではないでしょうか。ここでは、それぞれの違いを課される税と財産を渡す相手という観点から解説します。

税負担を抑えて財産をよりスムーズに渡すには、それぞれの特徴や手続き方法を理解することが大切です。生前贈与を検討している方は、一通りチェックしましょう。

財産を渡す時期や相手

生前贈与と遺産相続では、財産を渡す相手と時期が異なります。それぞれのポイントをまとめると以下の通りです。

  財産を渡す相手 財産を渡す時期
生前贈与 贈与者が定めた相手 贈与者が生存している間
遺産相続 法定相続人(遺言がない場合) 被相続人の死亡後

生前贈与では、贈与者が生存している間に任意の相手に渡せます。遺産相続は死亡後に法定相続分に従って相続するのが基本です。法定相続分に従わない相続や相続人以外への遺贈も可能ですが、その場合は遺言によって指定しなければなりません。

課される税や対象者

生前贈与と遺産相続では、課される税や納税義務者が異なります。税金面の特徴は以下の通りです。

  課される税 納税義務者 基礎控除額
生前贈与 贈与税 受贈者 110万円/年(暦年課税方式)
遺産相続 相続税 相続人・受遺者 3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税には未成年者控除や障害者控除、暦年課税に係る贈与税額控除、相続時精算課税に係る贈与税額控除などがあります。

贈与税にも特例や非課税制度がありますが、その内容は異なるので事前に確認しましょう。相続税・贈与税それぞれの仕組みをきちんと理解し、適切に相続税対策することが大切です。

税金の手続きをする時期

相続税と贈与税は、申告・納税する時期も異なります。期限までに正しく申告して納税しましょう。

・相続税: 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から起算して10か月以内
・贈与税: 贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日

相続税の場合、2月10日に被相続人の死亡を知ったケースの申告期限は12月10日です。申告期限までに申告・納税しなければならず、遅れたり実際より少なく申告したりすると加算税や延滞税が課されます。

贈与税の期限は相続税に比べて分かりやすくなっていますが、正しく申告しないと加算税や延滞税が課されるのは相続税と同様です。

生前贈与をスムーズにするためのポイント

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生前贈与は適切に実施しなければ税務署に否認されるリスクがあります。スムーズに生前贈与するには、ここでご紹介する3つのポイントを意識することが大切です。

税務以外の側面では、遺留分について理解していないとトラブルに発展する可能性があります。予期せぬトラブルの種をまかないためにも、ポイントをきちんと押さえましょう。

定期贈与・名義預金とみなされないような贈与をする

生前贈与するときには、税務署に定期贈与・名義預金と判断されないような注意が必要です。定期贈与や名義預金と判断されるケースには以下のものがあります。

・定期贈与: 定期金給付契約に基づいた贈与、毎年同じ時期に同額で実施した贈与
・名義預金: 受贈者名義の預金であるものの、実質的に贈与者が管理しているもの

定期贈与と判断されることを防ぐには毎年違う時期・金額で贈与します。今年1月に110万円を贈与したら、翌年は3月に105万円贈与するなどして調整するのが有効です。名義預金と判断されることを防ぐには、受贈者が管理している口座に贈与する金銭を振り込みます。

生前贈与の証明書を準備しておく

生前贈与であると税務署に認めてもらうには、贈与者と受贈者の双方の合意があったことを証明する必要があります。贈与する意志と受け取る意志を客観的に証明しなければならないので、贈与契約書を作成するのが有効です。

贈与契約書は贈与する度に作成し、以下の内容を盛り込みます。作成したら、贈与者と受贈者がそれぞれ署名しましょう。

・贈与者の氏名、住所
・受贈者の氏名、住所
・贈与契約締結日
・贈与を実行する日
・贈与の方法(振込先の口座情報など)

他にも、贈与契約書に基づいて贈与を実施したことが分かるように、金銭は現金でやり取りせずに受贈者が管理している口座に振り込みます。

遺留分について理解しておく

生前贈与するときには、相続トラブルを防ぐためにも遺留分を意識しましょう。遺留分とは、法定相続人に最低限保証されている相続分です。遺留分を侵害して生前贈与すると、相続時に遺留分権利者から遺留分侵害額請求される可能性があります。

遺留分が認められるのは、被相続人の配偶者・直系卑属・直系尊属です。親族の状況に応じて遺留分がどの程度なのか異なるので、きちんと理解したほうがよいでしょう。遺留分に配慮して生前贈与することは、相続トラブルを回避するのに役立ちます。

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まとめ

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生前贈与は相続税対策に有効な手段ですが、贈与税や予期せぬ相続トラブルに注意しなければなりません。さまざまな特例や非課税制度などをうまく活用すれば、より効果的に税負担を軽減できるでしょう。

相続税や贈与税に関する制度には複雑な部分が多いので、専門家のサポートを受けることをおすすめします。さまざまな観点から相続税対策のサポートを受けたい方は、税務と資産運用の双方に強いネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)にぜひご相談ください。

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【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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