2020年10月7日
2021年3月19日資産運用
投資信託で確定申告は必要?【具体的な8つのケースもご紹介】

勤務先から給与を得ている会社員の場合、個人的に確定申告を行う機会はほとんどありません。しかし、投資信託で副収入がある方は「利益が出たときに確定申告をしなくてよいのか」と疑問に感じることもあるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、投資信託における確定申告の取り扱いについて詳しく解説します。ケース別に確定申告が必要かどうかをご紹介するので、自分が対象になっているかチェックしてみましょう。確定申告を行う際の注意点もピックアップしています。
目次
投資信託で確定申告が必要な場合は少ない
投資信託を継続的に行っている方の中には「確定申告をしたことがない」という方もいるでしょう。利益を受け取る際、あらかじめ源泉徴収されるシステムであれば申告は不要です。一般的に申告の必要がある方は少ないといえるでしょう。ここでは、確定申告の対象となる項目や源泉徴収について解説します。
分配金は基本的に課税対象
投資信託では、分配金を受け取ることで利益を得ます。細かく分類した項目は以下のとおりです。
公社債投資信託:普通分配金
株式投資信託:普通分配金、元本払戻金(特別分配金)
上記のうち、課税の対象として扱われるのは「普通分配金」です。元本払戻金には税金は課されません。普通分配金とは異なり、信託先に預けた元本が返金される形で受け取るためです。2020年4月現在の税率もあわせて確認しましょう。
- 所得税(復興特別所得税を含む):15.315%
- 地方税:5%
源泉徴収済みの金額が入金されるのが一般的で、ほとんどの場合、個人で税金を申告する必要はありません。入金前の金額には税金が含まれているため、税率を反映させると実際の利益が算出できます。
源泉徴収口座の利用で確定申告が不要に
投資信託の売却益は株式の売却益と同様に「譲渡所得」となり、申告分離課税によって課税されます。そのため、本来であれば確定申告しなければなりませんが、投資家が分配金を受け取る前に運用会社が税金を徴収しているため確定申告は不要です。条件によって免除されるのではなく、どのタイミングで納税しているのかを基準に考えましょう。
現在、源泉徴収ありの「特定口座」で投資信託を行っている方は、分配金を受け取ったあとも税金の申告は不要です。ただし、複数の口座から損益を合算したり繰り越したりする場合には申告しなければなりません。一般口座でも取引している方は別途申告が必要となるので、口座を開設する際はしっかりと確認しましょう。
投資信託で確定申告が必要ない条件は
投資信託で得た利益は、一定の条件に満たない場合は確定申告をする必要があります。しかし、実際には源泉徴収ありの特定口座を開設して運用している方が多いため、ほとんどの方が申告しなくてもよいと考えてよいでしょう。ここでは、確定申告が必要ない8つのケースをご紹介します。
源泉徴収ありの特定口座を利用している
取引に利用している口座が「源泉徴収あり」と設定されている特定口座の場合、利益が発生しても税金を申告する必要はありません。信託先が分配金を入金する際、あらかじめ所得税や地方税を差し引いて振り込むためです。口座を複数併用している方は申告を求められるケースもありますが、原則不要と覚えておきましょう。
「2,000万円以下の年間給与所得」で「20万円以下の投資等による利益」
勤務先から得ている給与所得と投資信託による利益が一定額以下であれば確定申告は不要です。以下の2つの条件を満たしているか確認しましょう。
- 給与所得が年間2,000万円以下
- 投資(投資信託)で得た利益が年間20万円以下
この場合の利益とは、投資信託以外の資産運用による利益も含みます。複数の口座を所有している方は、合計金額で判断する点にも注意が必要です。
「400万円以下の年間年金所得」で「投資等の利益が20万円以下」の場合
公的年金を受け取っている方は、給与所得ではなく年金額から確定申告の必要性を判断します。以下の2つに該当する場合は申告が不要です。
- 公的年金の収入金額の合計額が400万円以下
- 投資(投資信託)で得た利益が年間20万円以下
年金の金額がわからない場合、年金振込通知書を確認しましょう。
所得の金額が所得控除の額より少ない(給与所得、投資等の利益含む)
1年間で得た所得が控除額を下回る方は、税金を申告することなく利益を受け取れます。基本控除のみの場合、控除される金額は以下のとおりです。
- 所得税:38万円
- 地方税:33万円
所得には、給与所得だけでなく投資信託の利益も含まれます。ほかの投資で多額の利益を得た場合は申告が必要になるため、すべての所得を明らかにして判断しましょう。
NISA口座を投資信託に利用している
NISA口座で投資信託の取引を行っている方は確定申告が不要です。NISA口座は「非課税口座」とも呼ばれ、投資信託で得た利益は課税の対象になりません。ただし、一般口座も所有している場合、NISA以外の利益に対する税金は申告する必要があります。
つみたてNISA口座を投資信託に利用している
決められた限度額内でお金を積み立て、投資信託を購入する方法が「つみたてNISA」です。リスクを分散しながら長期運用できる方法ともいわれています。通常のNISA口座と同じく課税対象ではないため、利益が発生しても確定申告の義務はありません。
iDeCoで投資信託を運用している
私的年金のひとつであるiDeCo(確定拠出型年金)は税制上の優遇措置があり、運用益は非課税のため確定申告が不要です。また、積み立てたお金は60歳を迎えるまで引き出せませんが、受け取った年金は公的年金等控除が適用されます。
投資信託で利益確定(売却)を一度も行っていない
投資における所得税は、利益が確定したタイミングで課税されます。したがって、投資を始めてから一度も売却していない方は確定申告が必要ありません。口座の種類や収入状況が確定申告の対象に該当する場合でも、売却して利益を得るまでは申告しなくてよいと考えましょう。
確定申告したほうがよいケース
投資信託では多くの場合で確定申告をしなくても問題ありませんが、申告したほうがお得になるケースがあります。源泉徴収によって、余分な税金を支払っていることもあるためです。
たとえば、給与所得と投資信託の利益がともに課税対象となる金額以下であっても、源泉徴収ありの特定口座で取引していると税金が差し引かれます。これは本来納めなくてもよい税金です。源泉徴収された税金は確定申告すれば返金されます。
- 本来であれば税金が発生しない
- 源泉徴収ありの特定口座で投資信託を続けている
以上2つの条件に該当するなら、確定申告をして過払い分を還付してもらいましょう。税金が戻ってくれば、次回の投資信託に活用できます。
確定申告をするには
確定申告の際は、1月1日~12月31日の取引内容を細かく記載しなければなりません。源泉徴収ありの特定口座や簡易申告口座の場合、信託先から年間取引報告書が送付されます。以下の項目が明確になるので、これを活用して金額を記入しましょう。
- 勘定の種類
- 源泉徴収額
- 外国所得税額
- 売却取引の合計額
- 損失額
- 分配金額
金融機関によって報告書の項目は異なりますが、確定申告に必要な情報は網羅されています。紛失した場合は早めに問い合わせて再発行の申請をするとよいでしょう。
投資信託で発生した税金を確定申告する方法と注意点
会社員や公務員は年末調整で税額を確定しているため、基本的に確定申告をしなくても構いません。ただし、収入状況や口座の種類によっては申告が必要です。ここでは、具体的にはどのような方が対象となるのか、損益通算や繰越控除とあわせて見ていきましょう。
確定申告が必要な条件
現在投資信託を行っている口座が「源泉徴収なし」となっている場合、確定申告の必要性を見極めなければなりません。具体的には、以下のような収入状況の方は確定申告が必要です。
- 給与所得が年間2,000万円を超えている
- 給与所得以外に年間20万円を超える所得がある
- 主たる給与以外の給与とそれ以外の所得が20万円を超えている
本業の給与が年間2,000万円を超えている方は、投資信託の利益の額にかかわらず確定申告をしなければなりません。また、年収2,000万円以下でも、投資信託をはじめとする投資で20万円を超える所得を得た場合も同様です。
確定申告が不要になる口座
投資信託の取引に用いる口座は、以下の3種類に大別できます。
- 一般口座
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 特定口座(源泉徴収あり)
原則、確定申告が不要なのは、特定口座(源泉徴収あり)のみです。給与所得が2,000万円を超えたり投資の利益が20万円を上回ったりしても、規定の税金が差し引かれるので確定申告は不要になります。
一方、特定口座でも源泉徴収されない口座なら確定申告が必要です。また、一般口座で取引している場合、1年間の取引内容を自ら調べて申告する書類に反映しなければなりません。現在利用している口座がどの種類に該当するか分からない方は、確定申告の有無を把握するためにもきちんと調べておきましょう。
損失が生じた場合は確定申告で損益通算・繰越控除
投資信託で取引した1年間で損失が生じると、税金は課されません。確定申告の義務もありませんが、申告することで以下のメリットが得られます。
- 損益通算:株式の売買や投資信託の損益を通算して相殺
- 繰越控除:損益通算で相殺できない損失を翌年以降に繰り越す
損益通算は、複数の口座を所有して資産運用している方がメリットを得られる手続きです。たとえば、5万円の利益と3万円の損失を損益通算すれば、利益は2万円になります。課税対象が5万円から2万円に減るため、税額も減るという仕組みです。
また、損益通算しても相殺できない損失は、繰越控除によって最長3年間繰り越せます。翌年以降も利益を控除できるので、税金を節約するのに有益な方法といえるでしょう。
確定申告をする際の注意点
確定申告をするには以下のような方法があります。
- 国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用する
- 資産運用のセミナー(税務関係)に参加する
- 資産運用の専門知識をもつ税理士法人に相談する
自分で確定申告を行う方は、国税庁の公式サイトからアクセスして該当ページを参考に書類作成を進めるとよいでしょう。ただし、計算ミスや記入漏れのリスクも考慮しなければなりません。特に、確定申告の経験がない場合、正しく手続きできるか不安に感じるでしょう。
そのような方は、税金のプロに相談すると安心です。税理士に任せれば、書類作成の時間を短縮でき精神的な負担も軽減できるでしょう。
まとめ
投資信託を行う投資家の多くは、確定申告を必要としません。ただし、条件によっては申告しなければならないので、対象となる条件を把握しておくとよいでしょう。利益が少なかったり損失が生じたりした場合は、申告することで得をするケースもあります。
確定申告に関して不安のある方は、専門家に相談して適切なアドバイスを求めましょう。ネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー国際資産税、株式会社ネイチャーFAS)は、資産運用に特化したサービスを展開する税理士法人です。現在投資を行っている方だけでなく、これから始めたい方もぜひ一度お問い合わせください。

芦田 敏之
【監修者プロフィール】 税理士法人 ネイチャー国際資産税代表 国内外の資産税に精通しており、富裕層の資産対策を中心にワールドワイドかつ多数のコンサルティング実績を持ち、世界全体で約100の金融機関の間に人脈があります。資産規模100億円超えのクライアントに数多く対応してきたことから「日本一富裕層を知る税理士」というキャッチコピーで話題に。近年は働きやすい職場環境の普及活動にも意欲を見せており、これまでテレビ番組や日本経済新聞、Forbes JAPANなどさまざまなメディアにも登場しています。