2020年10月30日2021年12月23日税務

代襲相続とはどんな相続?仕組みや相続分を徹底解説!

家族の人形

本来の相続人がすでに死亡している場合、「代襲相続」の規定にのっとって子どもや孫が相続人となります。要因としてさまざまな理由が考えられますが、具体的な規定や要件を理解していない方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、代襲相続の基本概要から実際の相続を想定した金額の内訳まで徹底的に解説します。ケース別にピックアップするので、血縁関係や養子縁組の有無を含めて判断しやすくなるでしょう。相続人の間でトラブルにならない対策も紹介します。

 

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【基礎知識】代襲相続

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家族や親族が納得できる相続手続きのためには、代襲相続の知識が必要です。混同しやすい言葉との違いとともに、代襲相続の基本知識を押さえましょう。代襲相続が起こる理由も踏まえながら、根本的な仕組みを解説します。

代襲相続とは何か

なんらかの理由で財産を相続する権利(相続権)を失っている場合、本来相続する対象に代わって相続財産が割り当てられるのが「代襲相続」です。被相続人の子ども(長男)がすでに死亡しているケースを想定すると、以下のように相続権が承継されます。

・被相続人の妻:通常通り相続する
・長男(被代襲者):死亡しているため相続権なし
・長男の配偶者:相続権なし
・孫(代襲者):本来長男が相続する分を承継

再代襲相続との違いは?

代襲相続において、相続を承継する予定の孫も亡くなっている場合、代襲者の子ども、孫と永遠に対象を承継するのが原則です。代襲者から子どもに承継するときは「再代襲相続」、子どもが相続できず孫が対象となる場合は「再々代襲相続」となります。ただし、兄弟姉妹の承継では、子どもと同様のルールが反映されない点に注意が必要です。

例えば、相続人の弟がすでに死亡していた場合、弟の子ども(めい・おい)が承継します。弟の子どもも死亡していて権利を得られなければ、これ以上承継は続きません。兄弟姉妹では、子どもまでの代襲相続に限られるためです。上限なく承継できるのは、被相続人の子どもや孫であることを理解しましょう。

数次相続との違いは?

相続を予定している方が遺産分割協議や登記手続きを終える前に死亡した場合、新たに被相続人として協議や手続きを開始します。このとき、相続分の重複を避けるために行われるのが「数次相続」です。本来の相続人が権利を失うタイミングが代襲相続と異なります。

  代襲相続 数次相続
相続人の失権時期 被相続人が死亡する前 被相続人が死亡した後(相続関係の手続きを終える前)

相続が2回発生した場合は「二次相続」、3回なら「三次相続」です。数次相続はこれらを総称する言葉で、2回以上の相続を意味します。


代襲相続が起こる主な要因


孫やひ孫に相続権が与えられる理由は、相続人(被代襲者)が死亡したケースだけではありません。非行により権利を失ったり、被相続人が失権を希望したりする場合もあります。ここでは、代襲相続が起こる主な要因を3つ見てみましょう。被相続人と相続人の関係性や家庭環境も影響するため、具体的な例に触れながら解説します。

相続人が被相続人よりも先に死亡したケース

代襲相続が起こる理由として最も多く見られるのが、相続人が被相続人より先に死亡したケースです。

被相続人の子どもが死亡して相続できない場合、孫やひ孫が相続権を得ます。兄弟姉妹が死亡しているなら、代襲者は兄弟姉妹の子どもです。ただし、被代襲者が相続人の養子の場合、縁組の手続きをしたタイミングによって可否が異なる点に注意しましょう。

相続人が相続欠格者であるケース

被相続人を殺害、もしくは殺害未遂を起こした場合、相続人の資格を失います。具体的に想定される例は以下の通りです。

・被相続人を殺害した(または殺害しようとした)
・他の相続人を殺害しようとした
・遺言書を偽造したり、故意に破棄したりした
・被相続人の殺害を告訴しなかった
・被相続人の意思とは異なる遺言書を作成・変更させた(詐欺や脅迫)

本来の相続人は相続を認められませんが、子どもや孫には影響しません。被相続人の子どもが相続失格者になった場合、本人が死亡していなくても代襲相続が起こります。

相続人が相続廃除となっているケース

殺害や遺言書作成の強制といった明らかな理由がない場合でも、被相続人の意思による失権が可能です。例えば、以下のようなケースが考えられます。

・被相続人や他の相続人に対し、激しい虐待があった
・被相続人への著しい侮辱行為があった

被相続人が生前、家庭裁判所で相続人廃除を申し立てる方法が一般的です。相続人の相続廃除が認められると、子どもや孫に承継されます。一度確定した相続人廃除は、被相続人の手続きがあれば取り消しも可能です。

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代襲相続人となるための5つの要件


代襲相続で財産を相続するには、規定の要件を満たす必要があります。被相続人との血縁関係だけでなく、相続権の有無や相続放棄をしていないことも重要です。ここでは、代襲相続人となるための5つの要件の内容について具体的に解説します。

被代襲者が被相続人の子や兄弟姉妹

代襲相続が認められるには、「被相続人とどのような関係にあるか」が重要です。子どもや兄弟姉妹の他、養子縁組をした場合も相続できます。ただし、対象外となるケースもあるので注意しましょう。

認められる例 認められない例
・被代襲者が被相続人の子どもである
・被代襲者が被相続人の兄弟姉妹である
・被代襲者と養子縁組してから生まれた子どもである
・養子縁組をする前からいた子ども(連れ子)である

被代襲者が相続開始前時点で相続権を失っている

相続人の死亡や欠格により、代襲者として認められれば代襲相続が起こります。ただし、相続を開始する前の時点で、被代襲者が相続権を失っているかどうかが重要です。
例えば、被相続人が遺書で「相続人廃除を取り消す」と書いていた場合、代襲相続は起こらずに通常通りの相続手続きが進められます。相続人が生存している場合、被相続人の遺言が基準のひとつとなるでしょう。

(参考: 『民法第八百九十三条』

代襲者が相続欠格者や廃除者ではない

相続人廃除や相続欠格者として正式に認められた方は、子どもや兄弟姉妹でも相続できません。さらに、代襲者が相続の権利を得る場合に限り、代襲者にも適用される規定です。

代襲者が相続権を失権している場合、その子どもや孫へと承継されます。「被代襲者が死亡しているか」「相続権があるか」だけでなく、代襲者本人の現状も要件に含まれる点を理解しましょう。

被代襲者が相続放棄をしていない

代襲相続で注意したいのは、「相続放棄」に関する規定です。代襲相続を認める要件に、相続放棄は含まれません。
つまり、「相続人である子どもが相続を放棄した」というケースでは、放棄した方の子どもや孫も承継できなくなります。相続放棄とは、権利が承継可能な代襲相続とは異なり、相続財産そのものを自ら手放す選択肢です。

代襲者が被相続人の直系卑属である

血縁関係を基準に判断する際には、「代襲者が被相続人の直系卑属であるか」が問われます。直系尊属と混同しやすいため、以下の表を参考に言葉の意味を理解しましょう。

  直系尊属 直系卑属
本人との関係 自分よりも前の世代(直通する系統の親族) 自分よりも後の世代(直通する系統の親族)
・父母や祖父母
・養父母
・子どもや孫
・養子

相続人の子どもが代襲者となる場合、子どもの配偶者や親は承継できません。被相続人の配偶者に関する規定と間違いやすいため、ルールの違いを理解すると安心です。

 

【ケース別で分かる】代襲相続の相続分


基本的な概要だけでなく、具体的なシーンを想定した相続分を知ることも大切です。代襲相続の相続分について、被相続人と被代襲者の関係性別にチェックしましょう。ここでは、相続人が実の子どもや兄弟姉妹、養子縁組の場合を例に挙げて、具体的な金額を想定しながら解説します。

ケース1:実子の代襲相続の場合

被相続人から見て実の子どもが被代襲者となる場合、代襲者に認められるのは子どもの子ども(孫)です。3,000万円の財産を配偶者と2人の子どもと共に相続すると、それぞれの相続分は以下のようになります。

相続人 相続分の割合 取得金額
配偶者 2分の1 1,500万円
子ども(長男) 6分の1 500万円
子ども(次男) 6分の1 500万円
孫(三男・被代襲者の長男) 12分の1 250万円
孫(三男・被代襲者の次男) 12分の1 250万円


本来の相続人である三男は全財産のうち6分の1を受け取れるので、代襲者の孫2人が半分ずつ承継します。

ケース2:兄弟姉妹の代襲相続の場合

被相続人の親がすでに亡くなっており、配偶者や子どももいない場合、兄弟姉妹が被代襲者です。ここでは、以下のケースを例に見てみましょう。

・相続財産は3,000万円
・被相続人の両親はすでに亡くなっている
・被相続人に配偶者と子どもはいない
・兄弟姉妹も全員亡くなっている
・兄に子どもがいたが、すでに亡くなっている
・妹に子どもが1人いる

被相続人の兄弟姉妹を含め、関係者の多くが死亡しているケースです。この場合、相続できるのは妹の子どものみで、全ての財産を取得します。

相続人 相続分の割合 取得金額
兄(死亡) 2分の1 0円(代襲相続)
兄の子ども(死亡) 0円(死亡しているため相続不可)
妹(死亡) 2分の1 0円(代襲相続)
妹の子ども 3,000万円

ケース3:養子の代襲相続の場合

養子を代襲者とする場合、養子縁組が成立したタイミングが重要です。連れ子は代襲相続の対象ではありません。ここでは、以下の条件を例に紹介します。

・相続財産は3,000万円
・被相続人には配偶者と2人の子どもがいる
・長男と次男は被相続人の養子である
・長男は死亡しており、連れ子がいる(直系血族でない)
・次男は死亡しており、養子縁組の後に生まれた子どもがいる

相続人 相続分の割合 取得金額
配偶者 2分の1 1,500万円
長男(死亡) 4分の1 0円(代襲相続)
長男の子ども 連れ子(直系血族でない)のため、代襲相続なし
次男(死亡) 4分の1 0円(代襲相続)
次男の子ども 4分の1→2分の1
長男の連れ子が相続できないため
1,500万円

 

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代襲相続によるトラブル回避のためにできること女性の写真

むやみに相続人や相続分を決めると、思わぬトラブルが発生するかもしれません。子どもや孫の代襲相続に不安を抱えている方は、万が一のために事前に準備をすると安心です。遺言書を作成するだけでなく、生前贈与も視野に入れましょう。ここからは、代襲相続によるトラブルを避けるための対策を3つ紹介します。

事前に遺産分割について話し合っておく

相続の段階でトラブルになるのは、「相続人の数を把握していなかった」「相続人との協議に納得いかない」といった理由が代表的です。被相続人が亡くなってからでは意思を表明できないので、あらかじめ入念に話し合いましょう。

特に、代襲相続では、「養子に相続させたくない」「兄弟姉妹の相続分に不満がある」といったケースが想定されます。配偶者や子ども、代襲者となる相続人にどの程度相続させるのか、被相続人と相続人全員で話し合う機会を設けると安心です。

遺言書を残しておく

被相続人が残した遺言書は、相続において大きな効力を持ちます。自分自身の財産を守るためにも遺言書は重要です。配偶者や代襲者の相続分を決定したり、特定の相続人を相続から廃除したりといった意思も表明できます。

遺言書の内容が明確だと、相続人もトラブルを避けながら手続きを進められるでしょう。口約束のみでは認識が食い違う恐れがあるため、文書として遺言書に残すのがおすすめです。日付や被相続人の名前といった必要な情報もしっかりと記載します。

生前贈与をする

「自分が亡くなった後に親族がもめるかもしれない」と不安に感じている方は、相続人に確実に財産を分配できる生前贈与という方法があります。贈与の時期や内容によっては「特別受益」に該当し、相続が発生した際に修正が加えられる仕組み(特別受益の持戻し)も覚えておくとよいでしょう。

 

特別受益となる場合 特別受益となる内容

・被代襲者(推定相続人)に生前贈与する場合
・代襲者に生前贈与する場合
・養子縁組や婚姻など、推定相続人となる前の生前贈与

・養子縁組や婚姻の費用
・不動産の贈与
・動産や有価証券の贈与
・借地権の承継
・生命保険金(被相続人が相続人と同居していない場合)


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まとめ

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本来相続人となる子どもや兄弟姉妹が死亡している場合、代襲相続の規定に従って相続手続きを進めます。被相続人との関係性に加え、相続権の有無も重要なポイントです。代襲相続の要因や要件を理解した上で、適切に承継する準備を始めましょう。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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