2021年6月30日2022年7月5日相続・事業承継税務

相続放棄手続きの方法は?流れや注意点を整理

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相続放棄を決断した場合は、準備を整えた上で手続きをする必要があります。さまざまな書類に記入して家庭裁判所に提出しますが、具体的な流れを知らない方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、相続放棄における正しい手続きについて詳しく解説します。判断基準が分かれば、トラブルを避けながら適切な方法を見極められるでしょう。後半では、注意したいポイントを紹介します。

 

 

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相続放棄手続きをする6つの手順

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相続放棄は法的な手続きが必要です。不備があると手続きに問題が生じる恐れがあるため、入念に確認して次の段階へ進みましょう。書類の準備から申述書の提出、照会書への記入など、ここでは6つのステップに分けて手続きの流れを解説します。

1.費用と必要書類の準備

必要な書類は、被相続人と相続放棄者の関係性によって異なります。以下の表を参考に準備しましょう。

申請書類関係 ・相続放棄申述書
・収入印紙(800円)
・連絡用の郵便切手(家庭裁判所により異なる)
共通の添付書類 ・被相続人の住民票除票または戸籍の附票
・相続放棄者(申述人)の戸籍謄本
被相続人の配偶者が申述人の場合 ・被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
被相続人の子または代襲者が申述人の場合 ・被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
・申述人が代襲相続人の場合:被代襲者の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
被相続人の直系尊属が申述人の場合 ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の子が死亡している場合:子および代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している方がいる場合:死亡の記載がある戸籍謄本
被相続人の兄弟姉妹およびその代襲者の場合 ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の子が死亡している場合:子および代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡が記載された戸籍謄本
・申述人が代襲相続人の場合:被代襲者の死亡が記載された戸籍謄本

2.管轄の家庭裁判所の確認

必要書類は、被相続人が亡くなったときに居住していたエリアを管轄する家庭裁判所に提出する必要があります。裁判所ごとに異なる規定もあるため、事前に所在地を把握しておきましょう。管轄の家庭裁判所が分からない場合、裁判所のWebサイトからリサーチが可能です。

3.相続放棄申述書の記入

「相続放棄申述書」に必要事項を記入して捺印します。裁判所ホームページでダウンロードできますが、自作も可能です。

【必要事項】
・家庭裁判所の名称
・申述書の作成年月日
・申述人に関する個人情報(住所や被相続人との関係など)
・法定代理人に関する情報(必要であれば)
・被相続人に関する情報(本籍地や死亡年月日など)
・申述の理由
・放棄の理由
・相続財産の概略(負債を含む財産の内容)

間違いがあると、他の書類をそろえていても受理を断られることがあります。入念に確認しましょう。

4.家庭裁判所への提出

相続放棄申述書に記入・捺印し、必要書類を全てそろえた後、家庭裁判所へ提出します。提出方法は家庭裁判所に直接出向く方法と郵送の2つです。中には郵送を受け付けていない場合もあるため、事前に確認しましょう。また、裁判所から呼び出されたときは、郵送で提出した方も直接出向かなくてはなりません。

5.送付された照会書への記入・返信

相続放棄申述書や書類を提出した後は、家庭裁判所から「相続放棄照会書」が送付されるのが一般的です。申述書よりも詳しく理由などを記入する必要があります。以下が回答する項目の一部です。

・被相続人の死亡を知った時期
・相続放棄をすることの意味(相続権を失うこと)を理解しているか
・相続放棄をする具体的な理由
・遺産の処分や消費などの有無

全てを記入し、署名・捺印をして返送します。理由は自由に記入できるため、簡潔かつ伝わりやすい内容を心掛けましょう。

6.相続放棄申述受理通知書の受領

照会書を返送してから10日ほどで、「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。提出した書類の内容が認められて手続きが完了し、相続放棄者となった事実を証明する書類です。紛失しても再発行できないため、保管場所を決めておくとよいでしょう。

万が一、紛失した場合は「相続放棄申述受理証明書」で代用が可能です。求められた際は、提出することによって相続放棄の事実を第三者に証明できます。

相続放棄手続に進むかを決める判断基準

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相続放棄が適切か判断できないときは、財産調査をして見極めましょう。負債の有無のみで判断すると、損な結果を招くかもしれません。また、他の相続人との話し合いも重要です。独断で決断する前にしっかりと準備を重ねましょう。ここでは、判断基準として有効なポイントを2つ紹介します。

まずは十分な財産調査をする

まずは財産調査をしましょう。借金や未払い金のようなマイナスの財産のほうが多い場合、相続放棄すれば不利益を被らずに済みます。財産状況が下記のような場合は、相続放棄が適しているといえるでしょう。

・プラスの財産よりも負債のほうが明らかに多い
・被相続人が連帯保証人になっている

ただし、手続きの完了後に把握していないプラスの財産が見つかると、損をする結果になるかもしれません。十分な財産調査をした上で判断することが大切です。

なお、相続放棄をすると、相続権は法定相続人の範囲内で兄弟姉妹まで(※死亡の場合は代襲相続人となるおい・めいまで)移動します。移動する順番は、民法で定める相続順位と同じです。例えば、配偶者が相続放棄した場合、相続権は子に移ります。さらに、子の全員が相続放棄すると、第2順位の直系尊属に移るといった仕組みです。

負債も含めた財産が次の相続人へ引き継がれることになります。相続放棄を決断したときは、できるだけ速やかに下位順位の相続人へ伝えるといった配慮も必要かもしれません。

財産状況だけでなく他の相続人との関係も重要な要素

財産の内容だけでなく、他の相続人との関係性も重要な判断基準といえるでしょう。以下の状況の場合も相続放棄をすることで解決が期待できます。なお、相続放棄は他の相続人の同意は必要なく、単独で申立てが可能です。

・相続人間のトラブルに巻き込まれたくない
・特定の人に財産の全てを相続させたい
・他の相続人と疎遠である

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相続放棄手続きができる期間

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適切に手続きをするには、申立ての期限や期限を延長する方法に関する知識も大切です。期限を過ぎると書類の内容にかかわらず拒否されるケースがあります。予定通りに進められるように、手続きの種類や必要性を理解しましょう。ここでは、申立ての期限や延長する場合の手続きについて詳しく解説します。

相続放棄の申立てができる期限は3か月

実際に手続きする前に押さえておきたいのは、3か月の期限が設けられているということです。起算日は「亡くなった日」ではないため、以下の条件を押さえておきましょう。なお、期限内に申述に必要な書類を提出すれば、完了していなくても構いません。

申立てができる期限 自己のために相続の開始があったこと(自分が相続人となったこと)を知ってから3か月
要件 3か月以内の申述手続き開始(※手続きの完了ではない)

期限を延長する場合には別途手続きが必要

3か月の期限に間に合わないと判断した場合、家庭裁判所に相続放棄の申述期間伸長の申立てをすることで期限を延長できます。相続放棄の申立てと同様、期限は「自分が相続人となったことを知ってから」3か月です。以下に必要となる主な書類をまとめました。

・申立書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・利害関係を証する資料(利害関係人が申立てする場合)
・伸長を希望する相続人の戸籍謄本

被相続人との関係性によって、さらに別の書類が必要な場合があります。不足のないように確認しましょう。

期限を過ぎた場合の相続放棄は困難

3か月の期限を過ぎてから相続放棄の申述や伸長の申立てをしても、認められるのは「相当な理由がある場合」のみで、限定的であるといえるでしょう。申述期限である3か月を過ぎた時点で「遺産を相続することに同意した(承認した)」と判断されるためです。

自分が相続人となる事実を知ったら、できる限りの速やかな判断と手続きの開始をおすすめします。

相続放棄の熟慮期間の考え方

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相続について考えるときは、「熟慮期間」を意識しなくてはなりません。熟慮期間とは、相続放棄手続きができる期間のことです。承認するか放棄するかの決断をするまでに一定の猶予が与えられています。相続放棄の可否も「熟慮期間内に手続きしたか」が重要です。ここでは、熟慮期間の考え方やカウントが開始するタイミングについて解説します。

「自分が法律上の相続人となった事実を知ったとき」からカウント開始

相続放棄の申立てができる熟慮期間は「自身に相続の開始があったことを知った日から3か月」です。1日目となるカウント開始日は「知った日の翌日」であることに注意しましょう。例えば配偶者や子が被相続人の死亡の事実を知らなかった場合、熟慮期間は開始しません。

相続放棄により相続権が移動した場合、後順位の相続人は「先順位の相続人の相続放棄が完了したことを知ってから3か月」が熟慮期間です。開始日を「被相続人が亡くなった日」と誤解していた場合、熟考期間を過ぎたと勘違いし、手続きの機会を逃すリスクがあります。正しい認識を持って対応しましょう。

相続権や相続財産がないと信じていた場合には熟慮期間は開始しない

亡くなったことを知っていても、自身に相続権があることや相続財産がないと信じていた場合、熟慮期間は開始しません。ただし、正当な理由がある場合に限ります。

似たような事例でも熟慮期間が開始したと判断されるケースもあるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。

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相続放棄をする際の4つの注意点

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現時点で「相続財産を手放す可能性がある」と考えている方は、相続放棄に関する注意点をチェックしましょう。単純承認事由や被相続人の税金滞納の有無など、複数の観点から考慮することが大切です。ここでは、相続放棄の注意点を4つ紹介します。

単純承認事由があると相続放棄手続きが認められない

相続する財産を限定することなく、権利も義務も含めて通常通り相続するのが「単純承認」です。単純承認に手続きは不要なので、単純承認事由があると「相続を認めた」と判断される場合があります。以下はその一例です。

・預貯金を払い戻したり解約したりした
・不動産の名義を変更した
・携帯電話の名義変更や解約の手続きを済ませた
・遺産分割協議で分割に合意した

その他、生命保険の契約内容も注意が必要です。受取人が被相続人以外であれば相続放棄をしても受け取れますが、受取人が被相続人の場合、保険金を受け取ると単純承認事由に該当します。

被相続人が滞納した税金を納めると相続放棄ができない

相続放棄をすると、原則、被相続人が滞納した税金の納税は免除されます。ただし、認められないうちに届いた納税通知書に従って税金を納めると、相続したと見なされ相続放棄はできません。

一方、国民健康保険料は世帯主に納税義務があります。相続放棄者が世帯主であるときは納税しましょう。なお、相続放棄後は市区町村役場に相続放棄申述受理証明書などを提出することで、督促を止められます

相続放棄で代襲相続はできない

代襲相続とは、本来相続人になる方が亡くなっているとき、子が代わりに相続する制度です。例えば、被相続人の子が死亡していれば、子の子(被相続人の孫)が代襲相続者として相続します。ただし、被相続人の子が相続放棄した場合、子の子(被相続人の孫)に相続権が移ることはありません。

相続人の状況 代襲相続の可否
被相続人の子(相続人)が亡くなっている 相続人の子が代襲相続する
被相続人の子(相続人)が相続放棄をした 相続権は移らない

相続開始前の段階では相続放棄の手続きはできない

相続放棄は、自分が相続人となることを知って家庭裁判所に申述をすることで成立します。「早めに済ませたい」と考えていても、相続開始前に手続きはできません。

被相続人の生前に他の相続人に対して「相続しない」と意思表明することは可能ですが、遺産のうち自分の共有持分についてのみ放棄する「相続分の放棄」という位置付けです。法律上の相続放棄とは見なされない点に注意しましょう。

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まとめ

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相続放棄において正しい手続きをするには、入念な事前準備が大切です。むやみに決断すると損な結果を招く恐れがあるため、3か月という期限に注意しながら慎重に判断し、手続きを進めましょう。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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