2022年1月14日
2022年6月13日税務
法人税の中間納付とは?2つの申告方法と仕訳・注意点を紹介

企業が支払う法人税では、事業年度の中間に納付する「中間納付」をする決まりがあります。申告の仕方は2種類から選べますが、どちらが自社に適しているのか、実は詳しく分かっていないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、法人税の中間納付について詳しく解説します。申告方式の違い、手続きの仕方、注意点などを幅広くまとめました。
目次
法人税の中間納付とは
法人に課せられている中間納付とは、事業年度の中間に法人税の一部を前払いする制度のことです。確定申告時にまとめて納めさせるのではなく、複数回に分けて負担を軽減するのが目的です。事前に受け取ることで、確実に税収を確保するという狙いもあります。
中間納付の対象になる場合とならない場合
中間納付は必ずしないといけない制度ではありません。対象となるのは、前事業年度の法人税額が20万円を超えた企業です。
したがって、前事業年度のない設立1年目の企業などに申告義務はありませんが、合併によって設立された場合は例外で、前事業年度が存在しており、要件を満たしていれば課税対象となる点に注意してください。また、公共法人や公益法人等、協同組合等、人格のない社団・財団も対象外です。
中間納付の時期(期限)
中間納付の期限は、事業年度開始日から6か月を経過した日から数えて2か月以内と定められています。
事業開始日が4月1日であれば、6か月経過となるのは10月1日です。そこから2か月以内の11月30日までが、申告書の提出期限及び納付期限となります。期限を破ると延滞税が課される恐れもあるため注意しましょう。
法人税の中間納付方法は2つ
法人税の中間納付の方法は「仮決算」と「予定申告」の2つがあり、納税者が自由に選択できます。それぞれメリット・デメリットがあり、目的や業績に応じて使い分けることが大切です。以下で両者の違いを詳しく紹介します。
予定申告による納付
予定申告は、前事業年度の決算で納付した法人税額を基に割り出す方法です。以下の式のように、ややこしい計算が必要ないのは大きなメリットといえます。
・前期基準額=前年度の法人税額÷前年度の月数×6
この式で割り出した金額が10万円を上回る場合は、前事業年度の法人税額が20万円を超えることを意味しますから、予定申告をしなければなりません。一般的には、中間納付の時期になると税務署から予定申告書が送られてきます。そこに納付額を記入して提出します。
仮決算による納付
事業年度開始日から6か月経過した時点で、上半期を1事業年度と想定して中間決算することを「仮決算」といいます。そこで割り出した課税所得に法人税率を掛け、納付額を算出します。
前期に比べて経営が悪化している場合、仮決算をすることで納付額を少なくできるのがメリットです。ただし、仮とはいえ決算の体裁を取るため、貸借対照表や勘定科目内訳書の提出など、確定申告と同様の手間をかけなければいけません。
なお、仮決算の額が予定申告方式で割り出した額よりも多くなった場合、仮決算での申告はできません。
法人税の中間納付の計算
ここでは、中間納付の計算方法や提出の仕方を解説します。2種類ある中間納付のうち、どちらを選ぶかはメリット・デメリットを天秤にかけて選ぶとよいでしょう。例えば、「煩雑な事務手続きを避けたいから予定申告」「納付税を圧縮したいから仮計算」といった具合です。
予定申告の場合
「前年度の法人税額÷前年度の月数×6」の計算式で、予定申告の納付額を割り出せます。例えば、前年度の法人税額が400万円の場合は次のように計算します。
・4,000,000÷12×6=1,999,998
国税通則法に規定されている「計算過程で生じた円未満の端数は切り捨て」「確定金額は百円未満の端数切り捨て」を適用すると、中間納付額は199万9,900円になります。
単純ミスとして気を付けたいのが、前年度の法人税額×6/12とする計算です。
・4,000,000×6÷12=2,000,000
上記のように、この計算だと、額の200万円になってしまい、誤りです。
(参考: 『法人税の中間(予定)税額の算出方法について|国税庁』:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/24/04.htm)
仮決算に基づく場合
仮決算に基づく場合は、事業年度開始から6か月間を1事業年度とみなし、法人税額を割り出します。例えば、12月が決算であれば、その年の1〜6月が1事業年度です。その上半期の実績に基づいて、納付額を割り出します。
仮決算による申告の際は、損益計算書・貸借対照表・勘定科目内訳書・株主資本等計算書といった書類提出も義務付けられているため、漏れのないように注意しましょう。
確定申告時の手続き
中間納付は、「法人税の前払い」という位置付けです。そのため、前払いした法人税を確定申告で精算しなくてはなりません。
決算時に納める法人税額は、「確定法人税額-中間納付した法人税額」です。当然ながら、中間納付額が確定法人税額よりも多ければその分還付されます。
法人税の中間納付の仕訳はどうする?
中間納付では納税額が不確定であるため、納付した額を「仮払法人税等勘定」とし、借方に記帳して資産計上します。予定申告、仮決算どちらを選択しても仕訳は同じです。
・中間納付分40万円を当座預金から支払った場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮払法人税等 | 400,000円 | 当座預金 | 400,000円 |
また確定申告時は、精算する際に中間納付した「仮払法人税等」を取り崩し、残りを「未払法人税等」として計上します。
・決算時の法人税が100万円と確定した場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
法人税、住民税及び事業税 | 1,000,000円 | 仮払法人税等 | 400,000円 |
未払法人税等 | 600,000円 |
法人税の中間納付の注意点
中間納付をする際には、いくつか気を付けたいポイントがあります。代表的なのは、提出期限オーバーによるペナルティーです。余分な納税が発生するため、くれぐれも注意しましょう。その他の注意点も含めて、以下で具体的に解説します。
申告しなくてもよいが納税は必須
中間納付の対象となっている企業は、申告自体は必須ではありませんが、納期までに必ず納税しなければいけません。納期を過ぎると延滞税が発生します。
また、申告が遅れれば自動的に予定申告として処理されます(「みなし申告」と呼びます)。つまり、予定申告で100万円、仮決算で80万円だったとしても、100万円納めることになるということです。仮決算を希望する場合は、きちんと申告書を提出しましょう。
仮決算で納付額が0円でも申告は必要
業績が悪化し、仮決算で納付額が0円になったとしても、申告をしなければ「みなし申告」として処理されます。前事業年度分の実績を基に納付額が決まるため、今期の業績に関係なく納付しなければいけません。繰り返しになりますが、今期の業績が芳しくない場合は、仮決算で申告しておくことをおすすめします。
納付・申告の遅れや虚偽申告にはペナルティーあり
納付遅れや申告遅れ、虚偽の申告があった際にはペナルティーが課される可能性があります。本来の納付額に加えて、延滞税や無申告加算税、過少申告加算税も納めなくてはいけません。
延滞税は納税が遅れた場合に課されます。計算式は次の通りです。
・納付すべき法人税額×延滞税の割合(いつ完納するかで決定)×期限の翌日から完納日までの日数÷365日
無申告加算税は申告期限をオーバーした場合に課されるペナルティーですが、税務調査を受ける前に修正申告すれば本税の5%で済みます。しかし、税務調査で発覚した場合は本税の50万円までは15%、50万円を超える部分は本税の20%を納めなければいけません。
過少申告加算税は、仮決算で申告した額が本来の納税額よりも少ない場合に課されます。自主的に修正申告をすれば問題ありませんが、納期を過ぎてからの申告には追徴課税が発生します。また、申告が虚偽による悪質なものであれば、重加算税が課される場合もあります。
(参考: 『延滞税の計算方法|国税庁』:https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm)
(参考: 『確定申告を忘れたとき|国税庁
』:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm)
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まとめ
中間納付とは、事業年度の中間に申告し税を納める制度のことです。申告方法には「予定申告」と「仮決算」の2種類があり、納税者が選択できます。申告は必須ではありませんが、納税しなければ延滞料が課されるため注意しましょう。
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芦田ジェームズ 敏之
【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。 培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。 現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
英国国立オックスフォード大学ELP修了。東京大学EMP修了予定。
また、Mastercard®最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDのオフィシャルアンバサダーに就任。
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