2022年3月4日2022年6月13日相続・事業承継税務

相続税と贈与税|損をしないのはどちらの税金?

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相続税と贈与税はどちらも受け取った資産に対して課税される資産税です。ただし、同じ資産税でも税率や控除といった制度は異なります。「同じ金額の資産を渡す場合、相続と贈与のどちらが得なのか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、相続税と贈与税の基本的な仕組みや違いについてまとめました。実際の税額を比較する事例も紹介します。相続税と贈与税の違いを理解し、効果的な生前贈与をすることで相続税の節税へつなげられるでしょう。

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相続税と贈与税の違い

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相続税とは、相続や遺贈で資産を取得したときに課される税金です。一方、贈与税は個人から贈与により資産を取得したときに課される税金を指します。贈与税には、生前贈与によって相続税の課税を逃れようとする行為を防ぐ目的があり、相続税を補完する役割を担っています。

いずれも取得した資産の金額が多いほど高い税率が課される累進課税を採用しているのが特徴です。

相続税の仕組み

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平成25年度の税制改正によって相続税の基礎控除額が引き下げられ、相続税の納税義務者が約2倍に増えました。相続税がかかるのか判断する目安となるのが、非課税枠です。遺産総額が非課税枠を上回らなければ相続税はかかりません。また、非課税枠を超えたとしても、税額控除や特例を使って相続税を大幅に抑えられる場合があります。

相続税の非課税枠は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

相続税の非課税枠とは、基礎控除額を指します。基礎控除額である「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算した金額を超えなければ、相続税はかからず申告も不要です。法定相続人の数が増えるほど基礎控除額も増え、相続税のかからない遺産の額も大きくなります。

基礎控除額の計算式中にある「法定相続人」とは、民法で定められた相続人のことであり、該当するのは被相続人の子・直系尊属(父母など)・兄弟姉妹そして配偶者です。

配偶者は常に相続人ですが、それ以外は相続順位の最も高い者だけが相続人となります。相続順位は以下の通りです。

第1順位
第2順位 直系尊属(父母・祖父母など)
第3順位 兄弟姉妹

また、法定相続分とは民法で定められた相続割合をいいます。相続人ごとの法定相続分は以下の通りです。なお、子や直系尊属、兄弟姉妹が複数いる場合、均等に分けます。

配偶者と子が相続 配偶者1/2、子1/2
配偶者と直系尊属が相続 配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

相続税の税率

相続税を求める際は、課税対象となる金額をいったん合計し、基礎控除額を差し引きます。その金額を法定相続分に按分した金額が、各法定相続人のいったんの取得金額です。各法定相続人の取得金額に税率をかけて算出した各人の相続税を合算し、相続割合で按分します。実際に納める金額は、按分後の相続税から控除を差し引いて求めます。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

(参考: 『相続税の税率|国税庁』/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

相続税額を減額できる税額控除や特例

税額控除や特例によって相続税の減額が可能です。ここでは、相続税の税額控除や特例を紹介します。

・配偶者の税額軽減
配偶者は、実際に取得した財産が法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額まで相続税がかかりません。

・未成年者控除
法定相続人が20歳未満の未成年者の場合、相続税額から「20歳になるまでの年数×10万円」を差し引けます(令和4年4月1日以後は20歳から18歳に引き下げ)。

・障害者控除
法定相続人が85歳未満の障害者の場合、相続税額から「85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者の場合20万円)」を差し引けます。

・相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)
前の相続(一次相続)から次の相続(二次相続)までの経過期間が10年以内の場合に利用できる税額控除です。

・贈与税額控除
相続開始前3年以内に被相続人から暦年贈与された財産は相続税の課税対象であるため、その間に納付した贈与税は相続税から控除されます。

・小規模宅地等の特例
被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、相続する者が居住や事業のための土地を失わないようにする制度です。土地の限度面積や取得者の要件はありますが、居住用・事業用の土地は評価額を最大80%減額できます。

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贈与税の仕組み

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子や孫に生前贈与することは、相続税の節税対策として有効です。ただし、計画性のない生前贈与によって高額な贈与税が課され、本来の相続税より多く納税する場合もあります。生前贈与の前に贈与税の仕組みを理解し、慎重に検討しましょう。

暦年贈与の非課税枠は年間110万円

暦年贈与の場合、毎年110万円が基礎控除で非課税です。例えば、祖父と祖母から100万円ずつ受け取った場合、90万円(=200万円-110万円)に対して贈与税が課されます。

一方、贈与者が何人に贈与しても人数の制限はありません。孫5人に100万円ずつ合計500万円を贈与した場合でも、孫が他に贈与を受けた財産がなければ1人当たりの贈与額は110万円以下なので全額が非課税です。

贈与税の税率

贈与税の税率は「一般税率」と「特例税率」に分かれます。特例税率とは、祖父母や父母といった直系尊属から20歳以上の子や孫への贈与に関する税率です。それ以外は、一般税率を利用します。

【一般税率】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

【特例税率】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

(参考: 『贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁』/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm

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2,500万円の贈与まで「相続時精算課税制度」が適用できる

相続時精算課税制度とは、原則60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫に財産を贈与する場合に2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。2,500万円を超えた分には一律20%の贈与税が課されます。

ただし、相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産に加えられる点に注意しましょう。また、一度この制度を利用すると、暦年課税に戻せません。

贈与財産を相続財産に加える際は、贈与時の財産評価額を使用します。土地や非上場株式(自社株式)といった今後値上がりが予想される財産に関して、贈与時点の財産評価額で固定したい場合に有効な制度といえるでしょう。相続税の節税対策として利用する際は慎重に検討する必要があるため、税理士に相談することをおすすめします。

生前贈与で活用できる贈与税の非課税制度

贈与税の非課税制度は生前贈与の際に活用できます。ここでは、住宅の購入資金や教育資金、結婚資金の贈与について解説します。

・住宅取得資金等贈与
父母や祖父母から子や孫に住宅資金の贈与をした場合、要件を満たすことで贈与税が非課税となります。ただし、配偶者の親から取得した場合や金銭ではなく不動産そのものを取得した場合、住宅ローン返済資金としての金銭は対象となりません。

・教育資金贈与
父母や祖父母が30歳未満の子や孫に教育資金を贈与する場合、1,500万円まで贈与税が非課税です。習い事や学習塾のような学校以外の費用は500万円が上限額です。対象となる教育資金には、入学金や授業料の他、入学試験の検定料も含まれます。

・結婚・子育て資金贈与
20歳以上50歳未満の子や孫が結婚・子育て資金を直系尊属から贈与された場合、1,000万円まで贈与税がかかりません。なお、結婚に関する支出は300万円までが非課税です。挙式費用の他、家賃や敷金等の新居費用、不妊治療・妊婦健診の費用も対象となります。

どっちがお得?相続税と贈与税の税額を比較

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相続税と贈与税を比較した場合、どちらが安く済むのか気になる方もいるでしょう。ここでは、「1億円を相続したケース」「1億円を贈与したケース」「一部を生前贈与したケース」の3つの事例で、相続税と贈与税の税額を実際に比較します。

1億円を子2人が相続する場合

相続によって2人の子が1億円の資産を受け取る場合、相続税額は以下の通りです。なお、配偶者はすでに亡くなっているものとします。

課税遺産総額=1億円-(3,000万円+600万円×2人)=5,800万円
法定相続分に応ずる取得金額=5,800万円×1/2=2,900万円
子1人当たりのいったんの相続税額=2,900万円×15%-50万円=385万円
相続税の総額=385万円×2人=770万円

1億円を子2人に贈与する場合

一回の贈与で1億円を子2人が5,000万円ずつ受け取った場合、贈与税額は以下の通りです。なお、子2人はどちらも20歳以上で、特例税率を使用します。

基礎控除後の課税価格=5,000万円-110万円=4,890万円
子1人当たりの贈与税額=4,890万円×55%-640万円=2,049万5,000円
贈与税の総額=2,049万5,000円×2人=4,099万円

1億円を一度に贈与した場合の贈与税は4,099万円で、相続税の770万円を大きく上回ることが分かります。

20年間100万円ずつ生前贈与した場合

贈与税は年間110万円の基礎控除があり、長期的な節税対策として有効に活用できる制度です。1億円を20年かけて毎年100万円ずつ子2人に贈与した場合、贈与税はかかりません。相続財産は「1億円-100万円×20年×2人=6,000万円」で、相続税は以下の通りです。なお、配偶者はすでに亡くなっているものとします。

課税遺産総額=6,000万円-(3,000万円+600万円×2人)=1,800万円
法定相続分に応ずる取得金額=1,800万円×1/2=900万円
子1人当たりのいったんの相続税額=900万円×10%=90万円
相続税の総額=90万円×2人=180万円

20年かけて生前贈与した場合、生前贈与しなかった場合の相続税770万円と比較すると、590万円安くなりました。長い時間をかけて計画的に贈与することで、相続税が節税できます。

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生前贈与に関する3つの注意ポイント

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より効果的に生前贈与するには、計画性を持って長期的に取り組むことが重要です。誤った方法だと、効果が発揮されなかったり想定外の贈与税や相続税を納めることになったりします。ここでは、生前贈与で失敗しないための注意点をまとめました。

贈与から3年以内に亡くなった場合は相続財産として扱われる

年間110万円以下の贈与は贈与税がかかりません。ただし、被相続人が亡くなる前3年以内に贈与した財産は、相続税の課税対象になる点に注意が必要です。相続税対策として生前贈与をしても、3年たたずに被相続人が亡くなった場合は相続税の対象となります。

一方、被相続人の孫のような推定相続人以外への贈与は相続税の対象外です。早い時期から孫への生前贈与を始めることで、より効果の高い節税対策ができるでしょう。

「名義預金」は贈与と認められない可能性がある

「名義預金」とは、口座の名義人と実際にお金を出した方が異なる預金です。生前贈与のつもりで子や孫の名義で預金していても、贈与と認められない場合、相続財産として相続税の課税対象となります。

贈与は贈る側と受け取る側の双方の同意が必要です。名義預金を子や孫が知らなければ、被相続人の財産と見なされるため、注意しましょう。

非課税枠110万円以下でも贈与税がかかるケースがある

年間110万円以下の贈与でも贈与税がかかる場合があります。例えば、毎年100万円ずつ10年にわたって贈与すると贈る側と受け取る側の間で事前に約束している場合、金銭を定期的に受け取る「定期金給付契約」と判断されます。

このケースでは、100万円×10年=1,000万円を受け取る権利を贈与としたと見なされ、基礎控除額110万円を差し引いた890万円が贈与税の課税対象です。

毎年繰り返して行われる贈与を「連年贈与」と呼びます。連年贈与と見なされないためには、「一回の贈与ごとに贈与契約書を作成する」「贈与の時期や金額を変える」といった対策が必要です。

「相続税と贈与税の一体化」について検討が進められている

近年の高齢化に伴い、資産が高齢者に集中し若者に再分配されづらくなっていることから「相続税と贈与税の一体化」について検討が進められています。

現行の日本の制度では、相続開始前3年以内の贈与が相続財産に加算されますが、3年という期間は諸外国と比較し短いものです。例えば、アメリカは生涯、ドイツは10年、フランスは15年をさかのぼって相続財産とします。

相続開始前の長い期間における贈与財産を相続財産に加えることで、次の世代に財産を移転する時期にかかわらず税負担を一定にすることが可能です。また、相続税の回避行為としての生前贈与を防止する効果も得られるでしょう。このような観点から、相続税と贈与税の関係には見直しが必要です。

相続税・贈与税の節税対策は税理士に相談を!

相続税や贈与税を節税するための生前贈与は、計画的に取り組む必要があります。早く取り組むほどより効果的な節税対策が可能ですが、専門知識が欠かせません。損のない生前贈与は税理士に相談するのがおすすめです。

ネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)では、税金対策や資産運用といった多くの観点から、相続税対策をトータルサポートします。年間2,000件の相談・案件実績があり、蓄積したノウハウを生かした効果的な相続対策が可能です。

まとめ

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相続税と贈与税は資産に対して課される資産税です。税率や控除制度が異なるため、それぞれのメリットを生かし、計画性を持って生前贈与することで効果的に税負担を軽くできるしょう。

相続税や贈与税の制度は複雑な部分が多く、税理士に相談することをおすすめします。多面的な観点から相続税対策のサポートを受けたい方は、税務と資産運用の双方に強いネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)にぜひご相談ください。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

◇◆ネイチャーグループの強み◇◆
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