2022年3月9日2022年6月13日税務

法人税法施行令とは?令和3年度税制改正による改正点を解説

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法人税法施行令が、令和3年度税制改正によって改正されました。法人税法施行令とは法人税法に基づく政令で、法人税法の規定を補う役割があります。しかし、「何が規定されているのかよく分からない」という方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、法人税法施行令の基本情報をはじめ、令和3年度税制改正における法人税法施行令の改正点について解説します。

 

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法人税法施行令とは

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法人税法施行令とは、法人税法に基づきより実務的な取り決めを行うものです。減価償却費や役員給与など、ひとつひとつの項目について、より詳細な規定がされています。ここでは、「法人税法施行令の位置づけ」や「法人税法施行令の構成」などに焦点を当てました。

法人税の特色

所得税と比較した場合、法人税の仕組みには3つの特徴があります。まず、所得の区分がないことです。所得税では所得を10種類に分類し、それぞれの所得について計算方法が異なるのに対し、法人税では所得の区分がありません。

次に、所得の計算期間の違いです。所得税の計算期間は1月1日から12月31日までの暦年ですが、法人税の計算期間は事業年度であり、法人が自ら定めた期間で行われます。

最後に、税率です。法人税は基本的に単一税率ですが、所得税では所得金額が多くなるほど税率も高くなる超過累進税率が採用されています。

法人税に関する法令の種類

法人税にまつわる法令は、「法人税法」「租税特別措置法」「国税通則法」の3つです。租税特別措置法には法人税法の課税上の特例が規定され、国税通則法には法人税法をはじめとする各税法に共通して適用される取り決めが規定されています。

・法人税法-法人税法施行令-法人税法施行規則・減価償却資産の耐用年数に関する省令
・租税特別措置法-租税特別措置法施行令-租税特別措置法施行規則
・国税通則法-国税通則法施行令-国税通則法施行規則

3つの法令に、それぞれ「~施行令(政令)」「~施行規則(省令)」が付随している点に注目です。法人税法といった法律が国会で定められるのに対し、施行令(政令)は内閣、施行規則(省令)は各大臣が定めます。施行令(政令)や施行規則(省令)は、法律からの委任を受けて、より詳細で実務的な取り決めについて規定するものです。

法人税法施行令の構成

法人税法施行令は、大きく「総則」「内国法人の法人税」「外国法人の法人税」に分かれています。それぞれで定められている主な項目は、次の通りです。

第一編
総則
第一~四章 通則、連結納税義務者、法人課税信託、課税所得等の範囲等、得の帰属に関する通則、納税地
第二編
内国法人の法人税
第一~三章 各事業年度の所得に対する法人税、各連結事業年度の連結所得に対する法人税、退職年金等積立金に対する法人税、更正及び決定
第三編
外国法人の法人税
第一~四章 国内源泉所得、各事業年度の所得に対する法人税、退職年金等積立金に対する法人税、更正及び決定

(引用: 法人税法施行令/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000097

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令和3年度税制改正による法人税法施行令の改正点

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令和3年度税制改正によって、法人税法施行令の一部が改正されました。改正があった箇所は、「減価償却資産の範囲」「寄附金の損金不算入の特例に関する対象法人」「貸倒引当金制度における適用法人」「外国税額控除制度」「外国法人の恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入制度」です。

1.減価償却資産の範囲が変更

減価償却資産の範囲に、無形固形資産として「電気事業法に規定する配電事業を営む者に対して電気の供給施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して電気の供給を受ける権利」が加えられました。

つまりこの権利は、電気ガス供給施設利用権に追加されるものです。「エネルギー供給強靭化法(強靭かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)」が閣議決定したことを受け、配電事業への新規参入が可能になったことに伴い改正されました。

ちなみに、無形固定資産とは、具体的な形は持たないが財産としての価値を有する固定資産です。例えば、鉱業権や漁業権、ダム使用権、商標権、ソフトウエア育成者権などがそれに当たります。長期的に利用される資産で、毎年均等に償却されます。

2.寄附金の損金不算入の特例に関する対象法人が変更

寄附金の損金不算入に対する特例制度の対象である「公益の増進に著しく寄与する法人」の範囲に「定款に試験研究の成果を活用する事業等を実施する者に対する出資を行う旨の定めがある地方独立行政法人」が加えられます。

これまで出資業務を行う可能性のある地方独立行政法人は、対象から除外されていました。しかし、出資業務に対する全ての寄附金が除外されることを受け、研究事業活用事業者に対して出資する地方独立行政法人であっても、出資業務以外への寄附金であれば損金不算入の特例の適用を受けられるようになります。

3.貸倒引当金制度における適用法人の範囲が変更

貸倒引当金制度において、適用法人の範囲に「割賦販売法に規定する登録少額包括信用購入あっせん業者」が加わりました。これは「割賦販売法の一部を改正する法律」の改正によって、少額(10万円以下)の分割後払いサービスを提供する「少額包括信用購入あっせん」が新たな類型に加えられたことに伴う改正です。

貸倒引当金制度では、貸倒引当金として帳簿上で繰り入れた金額のうち、一定額までを法人税法上の損金として計上できます。貸倒引当金制度の適用法人の範囲は平成23年度税制改正によって大幅に縮小され、現在、大法人では金融保険業などを営む法人以外は適用できません。貸倒引当金制度を適用できる法人には、次のものが該当します。

・中小法人など
・銀行
・保険会社
・銀行または保険会社に準ずる一定の法人
・金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人

4.外国税額控除制度の見直し

外国税額控除制度とは、外国で課税された法人税などについて、日本で納付する法人税額から決められた控除限度額の範囲内で控除する制度です。国際的な二重課税を取り払うために定められています。この外国税額控除制度において改正されたのは、次の2箇所です。

・内国法人の国外事業所等に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入額
国外事業所等を通して行う事業に関連する負債の利子の額に、自己資本不足額が「その利子の支払の基因となる負債その他資金の調達に係る負債の額」に占める割合を乗じて計算することで、損金不算入額を算出することとなりました。

改正前の「その利子の支払の基因となる負債の額」に、「~その他資金の調達に係る負債の額」が追加されます。「外国法人の恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入制度」の改正に伴う改正です。

・外国税額控除の対象とならない外国法人税額
外国税額控除対象外の外国法人から受ける剰余金の配当等の額(外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けない部分の金額に限る)に係る外国法人税の額について、剰余金の配当等の額のうち、「外国子会社合算税制」との二重課税調整の適用を受ける部分に限り、外国税額控除対象外となりました。

5.外国法人の恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入制度の改正

恒久的施設とは一般的にPE(Permanent Establishment)の略称で呼ばれており、事業を行う一定の場所などを指します。本制度は、恒久的施設が本店などから独立した企業である場合に必要とされる資本が、恒久的施設の自己資本に達していない場合に、その「達していない部分」に対応する負債の利子を損金不算入とするものです。

今回の改正により、外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る負債の利子の額に、自己資本不足額が「その利子の支払の基因となる負債その他資金の調達に係る負債の額」に占める割合を乗じて計算することとなりました。改正前の「その利子の支払の基因となる負債の額」に「~その他資金の調達に係る負債の額」が加わります。

これは、マイナス金利によって生じていた不整合性を正す目的と、金融機関における実務上の負担を解消するために改正されたものです。この改正に伴い、外国税額控除制度の一部も改正されています。

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まとめ

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法人税法施行令とは、法人税法から委任を受けてより細かく実務的な規則を取り決める法令です。法人税法施行令は、令和3年度税制改正によって次の点が改正されています。

・減価償却資産の範囲
・寄附金の損金不算入の特例に関する対象法人
・貸倒引当金制度における適用法人
・外国税額控除制度
・外国法人の恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入制度

法人税法施行令をはじめ、法人税に関する改正は定期的に行われるものです。「改正点を漏らさず把握するのは難しい」という方は、専門知識のある税理士に相談することがおすすめです。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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