2022年3月11日2026年6月30日税務

法人税の実効税率とは?計算方法や表面税率との違いも解説

法人税の実効税率とは、法人に対して課税されるいくつかの税金の税率から計算した税率です。「法人税の実効税率を知りたい」という方もいるのではないでしょうか。正確な実効税率は事務所の所在地や資本金の額などによって異なり、法人ごとの状況に合わせて計算する必要があります。

そこでこの記事では、法人税の実効税率の計算方法に焦点を当てました。法人税の実効税率を構成する5種類の税金の紹介の他、これまでの税率の推移や国際比較についても分かる内容です。

法人税の実効税率とは?

法人税の実効税率は、法人が負担する税金を総合的に考慮した「実質的な税負担率」を指します。

法人の所得に対しては、法人税だけでなく、地方法人税や法人住民税、法人事業税など複数の税金が課されます。そのため、法人税率だけを見ても、実際の税負担を正確に把握することはできません。

そこで用いられるのが、実効税率です。

実効税率は、以下を加味し、さらに損金算入できる税金の影響も考慮して算出します。

  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税

実際の経営では、以下を判断する際の重要な指標として活用されています。

  • 今期の利益に対して税金がいくら発生するのか
  • 設備投資や役員報酬の見直しを行うべきか
  • 法人化による節税メリットがあるか

なお、実効税率は会社の所在地や資本金の額、所得金額によって異なるため、自社に適用される税率を把握することが大切です。

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法人税は表面税率と実効税率の2種類

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法人税とは、法人の企業活動から得られた所得に対して課される税金です。正しく税金を納めるためにも、法人税がいくら課されるのかを把握しておくことが大切です。 法人税は表面税率と実効税率の2種類あります。両者の違いを詳しく見ていきましょう。

法人税の表面税率とは

表面税率とは、法律が定めている税率です。法人の企業活動から得た当期の所得に対して申告納税するのがいくらなのかを指します。

法人税の実効税率とは

実効税率とは、法人の企業活動から得た当期の所得に対して課税される法人税(法人税、住民税、事業税)の表面税率から、所定の方法で算出される総合的な税率です。実質的に負担するのがいくらなのかを指します。

使用シーンは状況によって異なる

法人税の表面税率と実質税率の使用シーンは状況によって異なるので違いを覚えておきましょう。 表面税率は税金の申告や納税額を算出する際に使用する税率なので、法人税の確定申告で使用します。

実効税率は企業が実際に納税する税額に近い納税額を算出する際に使用する税率なので、法人事業税等も考慮して実質的な納税額を算出したい場合に使用するという点で異なります。

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法人税の実効税率と表面税率の違い

法人税計算上の所得はその事業年度の益金から損金を控除して求めるものであり、会計上の利益(=収益-費用)と異なります。

「益金の算入・不算入」「損金の算入・不算入」は法令によって細かく規定されており、会計上の利益と税務上の利益は一致しないのが一般的です。実効税率の計算に必要な法人税等の中にも、損金に算入される税金とされない税金があります。

法人税 損金算入されない
地方法人税 損金算入されない
住民税 損金算入されない
事業税 損金算入される
特別法人事業税 損金算入される

表面税率と実効税率の不一致は、法人税等のうち事業税と特別法人事業税が損金に算入されるためです。例えば、利益額1億円の東京23区における外形標準課税適用法人を例にした場合、法人税等の計算フローは次のようになります。

利益額1億円-(事業税113万7,000円+特別法人事業税250万5,000円)=9,635万8,000円
法人税:9,635万8,000円×23.20%=2,235万5,000円
地方法人税:9,635万8,000円×23.20%×10.3%=230万3,000円
住民税:9,635万8,000円×23.20%×10.4%=232万5,000円
事業税:9,635万8,000円×1.18%=113万7,000円
特別法人事業税:9,635万8,000円×2.6%=250万5,000円

法人税等の合計額=3,062万5,000円

法人税等の税率を乗じる額が、事業税・特別法人事業税を控除した後の金額であることに注目しましょう。この仕組みによって、税率の単純合計である表面税率との違いが生じます。

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法人にかかる主な税金は5種類 

法人の所得には、主に以下5種類の税金が課されます。
  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税
実効税率は、これらの税金を総合的に考慮して算出されます。

法人税

法人税は、法人の所得に対して国が課税する国税です。
 
国税庁によると、普通法人の税率は原則23.20%です。
 
ただし、資本金1億円以下の中小法人等については、一定の要件を満たす場合、所得800万円以下の部分に軽減税率が適用されます。 
 
区分 税率
所得800万円以下 15%
所得800万円超 23.20%
 
なお、令和7年4月1日以後開始事業年度において、所得金額が10億円を超える場合は、800万円以下部分の税率が17%になります。

地方法人税

地方法人税は、法人税額を基準として課税される国税です。名称に「地方」が付いていますが、地方税ではありません。
 
地域間の税収格差を是正する目的で創設されており、法人税額に10.3%を乗じて計算します。
 
法人税額が増えれば、地方法人税も連動して増加します。
 
参考:国税庁 地方法人税の税率の改正のお知らせ

法人住民税(都道府県民税・市町村民税)

法人住民税は、事業所が所在する自治体へ納める地方税です。
 
主に、以下の2つで構成されています。
  • 均等割
  • 法人税割
均等割は赤字でも発生する税金であり、資本金や従業員数に応じて決まります。
 
一方、法人税割は法人税額を基準として計算される税金です。
 
自治体によっては超過税率を採用しているため、所在地によって税率が異なる点に注意しましょう。

法人事業税

法人事業税は、法人が事業活動を行うことに対して課される地方税で、事業所が所在する都道府県へ納付します。
 
資本金1億円以下の普通法人など、外形標準課税の対象とならない法人では、主に所得に応じて課税される「所得割」が適用されます。 
 
所得区分 標準税率
年400万円以下 3.5%
年400万円超800万円以下 5.3%
年800万円超 7.0%
 
一方、資本金1億円超の法人など一定規模以上の企業には、外形標準課税が適用されます。
 
外形標準課税では、所得割に加えて以下の税目が課税されます。
  • 所得割
  • 付加価値割
  • 資本割
付加価値割は給与や賃借料などを基準に計算され、資本割は資本金等の額を基準に計算されます。
 
なお、法人事業税は税務上の損金として認められるため、法人税や法人住民税とは異なり、実効税率を計算する際に重要な役割を果たすでしょう。
 
参考:総務省 法人事業税

特別法人事業税

特別法人事業税は、地域間の税収格差を是正する目的で2019年10月に創設された国税です。
 
法人事業税の一部を分離する形で導入されており、法人事業税の申告・納付義務がある法人は、原則として特別法人事業税もあわせて申告・納付する必要があります。
 
計算式は、次のとおり。
 
特別法人事業税額 = 基準法人所得割額(または基準法人収入割額)× 税率
 
基準法人所得割額とは、標準税率で計算した法人事業税の所得割額を指します。
 
自治体で超過税率が適用されている場合でも、特別法人事業税の計算では標準税率ベースの所得割額を使用します。
 
主な税率は、以下のとおり。
 
法人区分 税率
外形標準課税法人・特別法人以外の法人 37%
外形標準課税法人 260%
特別法人(協同組合等) 34.5%
 
なお、特別法人事業税は法人事業税と同様に損金算入が認められるため、法人税の実効税率を計算する際にも考慮されます。
 
そのため、法人の実際の税負担を把握するうえで重要な税目の一つです。

法人税実効税率の計算方法

法人税の実効税率は、法人税だけでなく、地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税まで含めた実質的な税負担割合を表す指標です。
 
実効税率は、各税率を単純に足し合わせたものではありません。法人事業税および特別法人事業税は損金算入できるため、その影響を考慮して計算する必要があります。
 
一般的な計算式は、以下のとおり。
 
実効税率 =(法人税率 ×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率+特別法人事業税相当額)÷(1+法人事業税率+特別法人事業税相当額)
 
なお、特別法人事業税相当額は、次の式で求めます。
 
特別法人事業税相当額 = 法人事業税率 × 特別法人事業税率
 
実効税率は、資本金の額や所得金額、法人の所在地、適用される税率によって異なります。
 
そのため、自社の実際の税負担を把握するには、適用税率を確認したうえで計算することが重要です。
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法人税実効税率の計算シミュレーション

ここからは、法人税率や地方税率を踏まえながら、中小法人と大企業を例に税負担のイメージを確認してみましょう。
 
※税率は2026年6月時点の一般的な水準を前提とした概算です。実際の税額は所在地や資本金、所得金額などによって異なります。

中小法人(資本金1億円以下)が1,000万円の所得を計上した場合

資本金1億円以下の中小法人が、年間1,000万円の課税所得を計上したケースを考えてみます。
 
中小法人の場合、所得800万円以下の部分には軽減税率が適用されるため、実際の税負担は大企業よりも低くなる傾向があります。
 
<実効税率を約30%とする場合>
  • 課税所得:1,000万円
  • 税負担額:約300万円
  • 税引後利益:約700万円
このように、中小法人は軽減税率の恩恵を受けられるため、同じ利益額でも比較的税負担を抑えやすい点が特徴です。

資本金1億円超の法人が1,000万円の所得を計上した場合

一方で、資本金1億円超の法人には、中小企業向けの軽減税率は適用されません。
 
<実効税率を約30%前後とする場合>
  • 課税所得:1,000万円
  • 税負担額:約300万円
  • 税引後利益:約700万円
大企業では、外形標準課税の影響を受けるケースもあるため、利益水準だけでなく付加価値額や資本金額によっても税負担が変動します。
 

法人税の実効税率を計算するときの注意点

法人税の実効税率は、企業の税負担を把握するために役立つ指標ですが、実際に計算する際はいくつか注意すべきポイントがあります。
  • 資本金や所得金額によって税率が変わる
  • 自治体によって法人住民税・法人事業税が異なる
  • 法人事業税は損金算入される
  • 税制改正による変更にも注意する
  • 実効税率はあくまで目安として活用する

資本金や所得金額によって税率が変わる

法人税の税率は、すべての企業に一律で適用されるわけではありません。
 
たとえば、資本金1億円以下の中小法人は、一定の条件を満たせば所得800万円以下の部分に軽減税率が適用されます。一方で、資本金1億円超の法人は原則として、軽減税率の対象外にはなります。
 
また、令和7年度税制改正では、所得金額が年10億円を超える中小法人について、所得800万円以下の部分の税率が15%から17%へ引き上げられています。
 
そのため、自社の資本金や所得規模を踏まえて税率を確認することが重要です。

自治体によって法人住民税・法人事業税が異なる

法人税は全国共通ですが、法人住民税や法人事業税は自治体によって税率が異なる場合があります。
 
地方自治体には、標準税率より高い「超過税率」を設定できる制度があります。
 
たとえば、東京都や一部の政令指定都市では超過税率が適用されるケースがあり、同じ所得であっても所在地によって実効税率が変わるケースがあるでしょう。
 
実効税率を正確に把握するためには、国税だけでなく所在地の地方税率も確認する必要があります。

法人事業税は損金算入される

実効税率と表面税率の違いを生み出す大きな要因が、法人事業税の損金算入です。
 
法人事業税は法人税の計算上、損金として扱えます。そのため、税率を単純に合計した表面税率よりも、実際の税負担を示す実効税率の方が低くなるでしょう。
 
実効税率を計算する際は、この損金算入の影響を考慮しなければなりません。

税制改正による変更にも注意する

法人税制は定期的に改正されるため、過去の税率や計算方法をそのまま使用すると誤った結果になる可能性があります。
 
特に長期間更新されていない情報を参考にする場合は、最新の法令や国税庁の公表情報を確認する必要があります。

実効税率はあくまで目安として活用する

実効税率は企業の税負担を把握するうえで便利な指標ですが、実際の納税額と完全に一致するわけではありません。
 
税額控除や繰越欠損金、各種優遇措置の適用状況によって、実際の税負担率は変動します。
 
そのため、実効税率は「税負担を把握するための目安」として活用し、正確な税額計算や節税対策は、税理士など専門家へ相談するのをおすすめします。

法人税の実効税率を適正に下げて手残りを増やす方法

法人税の実効税率は法律で定められているため、税率そのものを自由に下げることはできません。
 
しかし、税制上認められている優遇制度や税額控除を活用することで、実質的な税負担を軽減し、手元に残る利益を増やすことは可能です。
 
ここでは、実効税率を適正に抑える代表的な方法を紹介します。
  • 中小企業の特権「年800万円以下の軽減税率」をフル活用する
  • 「税額控除」を有効活用する(賃上げ・中小企業経営強化税制)

中小企業の特権「年800万円以下の軽減税率」をフル活用する

資本金1億円以下の中小法人には、法人税の軽減税率制度が設けられています。
 
通常の法人税率は23.2%ですが、中小法人の場合は所得800万円以下の部分について15%の軽減税率が適用されます(一定の要件を満たす場合)。
 
<課税所得が800万円の場合>
  • 通常税率23.2%で計算した場合:約185.6万円
  • 軽減税率15%で計算した場合:120万円
 
中小企業では、単年度の利益だけで判断するのではなく、以下のように課税所得をコントロールしながら軽減税率のメリットを最大限活用するのが重要です。
  • 設備投資のタイミングを調整する
  • 必要な経費を適切に計上する
  • 決算対策を事前に行う
また、令和7年4月1日以後に開始する事業年度からは、所得金額が年10億円を超える中小法人について、800万円以下の部分の税率が17%へ引き上げられています。
そのため、自社が適用対象となるかを事前に確認しておきましょう。
 
「税額控除」を有効活用する(賃上げ)
 
実効税率を下げる方法として特に効果が高いのが、税額控除制度です。
 
経費計上は課税所得を減らす仕組みですが、税額控除は計算された法人税額そのものを直接減額できるため、節税効果が期待できるでしょう。
 
代表的な制度として挙げられるのが、賃上げ促進税制です。
 
従業員の給与を一定割合以上引き上げた場合、増加した給与額の一部を法人税額から控除できるため、人材投資と節税を同時に実現できるでしょう。また、中小企業経営強化税制を活用し、取得した固定資産の10%の税額控除を取ることも一般的に行われています。
 
ただし、税額控除制度には適用要件や申請期限が設けられているため、活用を検討する際は税理士や専門家に相談しながら進めるのをおすすめします。

法人税実効税率の推移と国際比較

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法人税改革が進められる中、法人税実効税率は平成27年度改正から引き下げられています。

年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成30年度
法人税実効税率 34.62% 32.11% 29.97% 29.74%

また法人税率の引き下げは近年の世界的な傾向であり、日本に限りません。経済協力開発機構(OECD)によると、2000年と2018年の法定法人税率を比較した場合、94カ国中76カ国において税率が引き下げられています。

2021年1月現在における各国の法人税実効税率は、次表の通りです。多くの先進国において、法人税実効税率が30%未満であることが分かります。

国名 日本 ドイツ フランス アメリカ カナダ イタリア イギリス
法人税実効税率 29.74% 29.93% 25.00% 27.98% 26.50% 24.00% 19.00%


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まとめ:法人税の実効税率を正しく理解して納税額を把握しよう

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実効税率とは、所得に対する実際の税負担率を表すものです。法人税、地方法人税、住民税、事業税、特別法人事業税の税率によって、次のように計算します。

・実効税率={法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率+(事業税率(標準税率)×特別法人事業税率)}÷(1+事業税率+(事業税率(標準税率)×特別法人事業税率))

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