2023年2月15日2023年6月1日税務

税制改正大綱2023(令和5)の注目ポイントを抜粋して解説!

2021年12月16日、今後の税制についての方針をまとめた「税制改正大網」が発表されました。2023(令和5)年度以降、法人税の上乗せや新NISAの設立、インボイス制度に伴う税制改正などが行われる予定です。

今回は、「今後の税制改正によって、自分にどのような影響があるのか把握したい」という方へ向けて、税制改正大網の注目ポイントを分かりやすく解説します。多くの方に関わる内容となっているため、ぜひ参考にしてみてください。

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2023(令和5)年度の税制改正大綱はいつ発表された?


2023(令和5)年度の税制改正大綱は、2022年12月16日に公表されました。日本の税制は、経済の変化に伴い、毎年見直されています。国民や団体の希望を取り入れながら、税負担の公平性を保つためです。

政府の税制調査会は、業界団体や税理士会、各省庁から集めた要望について話し合い、翌年度以降における税制の方針をまとめます。政府はこれをもとに税制改正法案を作成し、翌年1月の通常国会に提出します。国会にて法案が成立すると、翌年度4月から新たな税制が施行される仕組みです。

例年、税制改正大網は12月中旬を目途に決定します。具体的には、税率や課税対象の変更、新たな税金の導入などが盛り込まれます。

【法人税の注目ポイント】法人税に特例措置を上乗せ

防衛力強化を目的に安定した財源を確保するため、法人税額に対して税率4~4.5%の付加税を課す方針が公表されました。令和6年度以降の実施が検討されています。法人税実効税率は現行の29.74%から実質1%程度の増税となります。

付加税の税率 付加税を加えた実質の法人税率
4% 30.63%
4.5% 30.75%

ただし、中小企業の負担を軽減するため、課税法人税額から500万円を控除した額に税率4~4.5%を乗じて算出する配慮がなされています。また、税額控除の額が1,000万円から2,400万円に引き上げられることになったことから、法人課税所得が2,400万円以下の場合、付加税は発生しません。

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【所得税の注目ポイント】新NISA創設と「1億円の壁」を是正

通常、投資信託や株式投資などで得られた利益には所得税が発生しますが、NISAを活用すると非課税での運用が可能です。2023年度の税制改正大網により、このNISAに関するルールが変更されることになりました。また同じく所得税の税制改正として、超富裕層への課税強化も実施される予定です。

NISAの抜本的拡充と恒久化

NISA制度の拡大を目指し、新・NISAとして内容が一新します。現在のNISAは、以下3種類に分かれています。

一般NISA 年間120万円まで購入可、最大5年非課税で運用できる
つみたてNISA 年間40万円まで購入可、最大20年非課税で運用できる
ジュニアNISA 年間80万円まで購入可、最大5年非課税で運用できる

今回、非課税保有期間を無期限とし、年間投資額を拡大する方針が決定しました。ジュニアNISAは廃止、一般NISAとつみたてNISAをまとめ二段階で運用できるようになっています。

  つみたて投資枠 成長投資枠
年間投資可能額 120万円 240万円
非課税限度額 合計1,800万円(成長枠は1,200万円まで)
非課税運用期間 無期限

従来は、一般NISAとつみたてNISAのいずれかでしか運用できませんでした。しかし新・NISAでは、リスクの低い商品を対象とするつみたて投資枠と、上場株式などを購入できる成長投資枠の両方で運用可能です。

超富裕層への課税強化

極めて高い所得のある超富裕層に対する課税強化が、方針として決定しました。以下で計算した金額が所得税額を上回る場合、差額分が上乗せして課税されます。

(基準所得金額-特別控除3.3億円)×22.5%

基準所得金額とは、株式の譲渡所得の他、土地建物の譲渡所得、給与・事業所得、その他の各種所得の合計です。2,000万円の給与所得に加えて15億円の配当所得がある場合の納税額を比較してみましょう。

従来の所得税 約2億3,020万円
改正による申告納税 (15億2,000万円-3.3億円)×22.5%=約2億6,775万円

このように所得税額を上回る約3,775万円は、追加で徴収されます。資産運用による配当所得や利子所得(源泉分離課税)、不動産や株式の売却によって得られる譲渡所得など、分離課税所得が多いほど、税負担が重くなる仕組みです。

【消費税の注目ポイント】インボイス制度の各種軽減措置

インボイスとは、正しい適用税率や消費税額を記載した請求書のことです。売り手は買い手から求められた際に、インボイスを交付する必要があります。一方買い手は、インボイスによって、税額控除が適用される場合があります。2023年度の税制改正大網では、このインボイス制度に関する方針もいくつか決定しました。

小規模事業者の税額控除に関する軽減措置

これまで年間売上が1,000万円以下で消費税が免除されていた事業者も、インボイス制度によって課税所得者となります。事業者のさらなる税負担が懸念されており、小規模事業所に対して、税額控除が実施される予定です。

通常、事業者が支払う消費税は、仕入れなどで支払った消費税を売上から差し引いて計算しています。今回の改正により、売上が1,000万円以下の事業所であれば、仕入れ時の消費税納税額にかかわらず、売上に対して一律2割のみ納税すればよいとする軽減措置が取られる方針です。

例えば、500万円の仕入れによって1,000万円の売上が出た際の消費税は、以下のように計算します。

  仕入れ時に払った消費税 売上にかかる消費税 最終的な納税額
軽減措置前 50万円 100万円 50万円(差額)
軽減措置後 50万円 100万円 20万円(売上にかかる消費税の2割)

上記の場合、軽減措置によって消費税の納税額は30万円軽くなります。適用期間は令和5年10月1日から3年間です。

中小事業者の少額取引にかかる事務負担の軽減措置

インボイス制度に伴い、各事業所は事務作業の増加が懸念されています。そのため今回の税制改正大網で、小規模事業者の事務負担軽減を目的とした制度も決定しました。

売上高が1億円以下の事業者が1万円未満の商品を購入する場合、インボイスを保存しなくても帳簿だけで仕入れ税額控除が受けられる措置です。さらに課税売上高が1億円を超える事業所でも、前年開始日以降6か月間の課税売上高が5,000万円以下であれば適用されます。インボイス制度施行から6年間は、この緩和措置が継続される予定です。

なお、従来は、3万円未満の取引に関する請求書保存が不要とされていました。この軽減措置では1万円未満が対象であるため、混乱しないよう注意が必要です。

【相続税・贈与税の注目ポイント】期間や評価額等の見直し

親や祖父母などから贈与を受ける場合、暦年課税または相続時精算課税制度のいずれかを選択して納税します。ただし「教育資金」「結婚・子育て資金」に関しては、それぞれ特例で控除の対象です。今回は、相続や贈与に関する税制改正の方針について、いくつか解説します。

生前贈与加算期間が3年間から7年間へ

暦年課税を選択した場合、年間110万円までは基礎控除が適用されるため贈与税が発生しません。ただし、相続が始まる3年以内の生前贈与に関しては、相続財産に加算する決まりです。この制度が、今回の税制改正により、3年から7年に引き伸ばされることになりました。

これまでより相続財産の対象が増えるため、相続人の税負担が重くなる可能性は高くなるでしょう。そこで、相続開始前4~7年間の間に取得した財産については、財産価額の合計から100万円が控除される制度も同時に始まります。

1年ずつの控除ではなく、総額100万円までとなっているため注意しましょう。令和6年1月1日以後の贈与により取得する財産について適用され、令和13年1月1日以降の相続より完全移行の予定です。

相続時精算課税制度の見直し

相続時精算課税制度とは、1人の贈与者からの贈与が合計2,500万円であれば、相続財産と併せて価額を評価し、相続税として納税できる制度です。贈与が3,000万円の場合、2,500万円分を除いた、残り500万円には一律20%の贈与税が発生します。

従来、贈与税非課税となった2,500万円分に関しては、年間110万円の控除が受けられませんでした。しかし今回の税制改正に伴い、相続時精算課税制度でも適用となります。

  改正前 改正後
贈与税の計算式 (贈与額‐2,500万円)×一律20% {(贈与額‐110万円)-2,500万円}×一律20%

相続時精算課税制度を利用する場合でも、年間110万円までの贈与であれば申告や納税が不要です。

生前贈与加算期間が3年間から7年間へ延長することも踏まえると、年間110万円ずつ贈与する場合、暦年贈与より相続時精算課税制度を利用したほうが、相続税は軽くなる可能性が高いといえます。ただし贈与が7年以上続く場合は、この限りではありません。

また相続時精算課税が適用されている建物や土地が、相続税として申告するまでの間で災害による被害を受けた場合、課税価額を再計算する方針も決定しています。

「教育資金」「結婚・子育て資金」の一括贈与の特例期限を延長

教育や結婚・子育てを目的とした資金の一括贈与については、通常の贈与とは異なる特別枠で控除を受けられます。

  控除限度額 従来の適用期限 改正後の適用期限
教育資金 1,500万円まで 令和5年3月31日 令和8年3月31日
結婚・子育て資金 1,000万円まで 令和7年3月31日

今回の税制改正大網では、控除額等に変更はありませんが、適用期限に関して教育資金は3年間、結婚・子育て資金は2年間延長となります。

また教育資金に関して、従来は贈与者の相続が始まり、使いきれていない分があっても、受贈者が23歳未満であれば課税対象ではありませんでした。ただし今回の改正によって、相続税の課税価格合計が5億円を超える際は、無条件に相続税の対象となります。

マンションの相続税評価は見送り

現在、マンションの相続税評価における問題が浮彫りとなっています。市場での売買価格と相続税評価額に、大きなズレが生じているという内容です。

通常不動産の相続税は、建物は固定資産税評価額、土地は路線価に基づいて計算されます。実際の市場価格は過去の売却価格なども加味されており、需要のある物件ほど高値の傾向にあります。
特にタワーマンションは、評価額が市場価格よりも大幅に下回るケースが多く、税金対策として購入する方がいて問題となっていました。今回の税制改正大網では明確な方針が決定していませんが、今後、適切な評価額を付けるための具体的な評価方法が検討される予定です。

税務に関するお困りごとはネイチャーグループにご相談ください

今回の税制改正では、法人税や相続税といった一部の方を対象にした内容だけでなく、多くの方が関係する内容も含まれています。

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まとめ

2022年12月に発表された税制改正大網では、法人税から所得税、相続・贈与税、消費税まで幅広いジャンルにおいて、税制改正の方針が決定しています。多くの方が、生活していく上で影響すると考えられるでしょう。

改正の内容を十分理解し、変化に応じて資産運用や税務の方法を変えていく必要があります。少しでも不安を持っている方は、ぜひネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)へのご相談を検討ください。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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